2016年 6月 1日公開

実務者のためのCAD読本

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

<RevitとARCHICAD>どちらも詳細図は2Dで作る?【BIM再入門-最適なツールの正しい使い方/第2回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

シリーズ記事

1 実務に役立つ2冊のBIM解説書

BIMの解説書としてお薦めしたいのはこの2冊だ。Revitの解説書として、伊藤久晴さんの『Autodesk Revit公式トレーニングガイド』(日経BP社)、ArchiCADの解説書として、筆者の属しているBIM LABOによる『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』(エクスナレッジ)だ。

いずれも実務でBIMアプリケーションを使っている著者によるものなので、BIMアプリケーションの売り込みのための大げさなところがない。例えばいずれもBIMモデルを作成してそこから図面を作成する手順を解説しているが、BIMを使えば3Dモデルがかんたんに図面にできるとは書いてはいない。逆に手間の掛かる、きちんとした図面を作成するための手順を解説している。

『Autodesk Revit公式トレーニングガイド』(日経BP社)の画像

『Autodesk Revit公式トレーニングガイド』(日経BP社)

『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』(エクスナレッジ)の画像

『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』(エクスナレッジ)

2 2D作図が大事という主張

『Autodesk Revit公式トレーニングガイド』では2Dの作図から解説が始まる。BIMなのに2D作図の解説から始まるのだ。そこには伊藤さんのRevitは3Dだけではない、という強い意思が読み取れる。2Dと3Dのそれぞれの特徴を理解して使いこなすことが大事ということと、Revitには十分な2D作図ツールが用意されていることを強調しておきたいというメッセージが込められているようだ。約300ページの本で100ページ近くが2Dの解説に当てられている。

筆者も今期の大学の授業で前期はAutoCAD、後期はこの本を教科書にしてRevitの授業を行う予定だ。AutoCADで2D作図を学び、RevitでBIMを学ぶという素直なカリキュラムになると思う。

もう一冊の『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』では「Chapter 3 モデルから実施設計図面を作成」というBIMモデルから図面を作成していく手順に全体の3分の1の紙幅を取って解説している。「BIMではこれまでのような図面は作れないのでは?」という疑問・批判に対して「ほら、こんなきちんとした図面が作れますよ」という、この章を担当した新 貴美子さんの意気込みが感じられる。

ArchiCADで作られた平面詳細図(『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』より)

ArchiCADで作られた平面詳細図(『ArchiCADではじめるBIM設計入門[基本・実施設計編]』より)

3 矩計図を作る-Revitで

『Autodesk Revit公式トレーニングガイド』で紹介されている矩計図(かなばかりず=断面詳細図)を作成する手順を見てみよう。BIMモデルから2次元の詳細図を作り上げていくには、どんな作業が必要なのだろうか?

上の図が3Dモデルを単に断面で切って表示した状態の図で、下図がそこに2D要素を加筆して出来上がった矩計図だ。

3Dモデルを断面表示した画面

3Dモデルを断面表示

矩計図として加筆した結果画面

矩計図として加筆した結果

伊藤さんは2D要素の加筆について次のように書いている。

「(上の図では)基礎や鉄骨などの構造の表現や、床や屋根の表現ができていません。そういった部分を2Dドローイングと併用して修正してゆきます」
「1:100までの基本図については、原則的にモデルで全て作成し、1:50などの詳細図においては、グループ化部品や詳細コンポーネント、詳細線分などによる書き込みを併用して図面を作ればよいと考えています」

基本となる1/100のモデルを下書きに、2Dでたくさん加筆するという手順だ。BIMだから全てをモデリングして、と堅苦しく考えないで、臨機応変にと柔軟な考え方に安心させられる。