2016年 5月 1日公開

実務者のためのCAD読本

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形状偏差の使い方1【世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 6th STEP/第1回】

機械系CAD 講師:山田学

シリーズ記事

1  形状偏差の使い方1

5th STEPでは、寸法と幾何特性の違いを知り、加工によって形が崩れる原因や計測の原理、データムの記入法と幾何特性の公差領域について学んだ。
6th STEPでは、具体的な幾何特性14種類について、その解釈と記入テクニックについて解説する。

第1回は、14種類の幾何特性のうち形状偏差に分類される「真直度」と「平面度」について説明する。

形状偏差

形状偏差とは、「対象となる形体が、平面や線など、幾何学的に正しい形状を表す偏差の許容値内にあるかを規定する」と定義される。
また、幾何公差の分類の中で、唯一、単独形体と呼ばれ、データムを参照しないことが特徴である。

形状偏差には、次の六つの幾何特性がある。

  • 真直度
  • 平面度
  • 真円度
  • 円筒度
  • 線の輪郭度
  • 面の輪郭度

今回は、上記のうち、真直度と平面度について説明する。

1.真直度

真直度とは、「直線形体の幾何学的に正しい直線からのひらきの許容値」と定義される。
つまり、真直度の評価対象となる形体は、「1本の直線」と認識すればよい。

真直度を適用する公差領域は、次の3種類である。

  • 2本の直線間の領域(2次元平面)
  • 円柱の領域(3次元空間)
  • 角柱の領域(3次元空間)

真直度の図面指示例を見てみよう。

1) 円筒軸の真直度(母線指示)

円筒軸の母線に真直度を指示する場合、直径の寸法線と指示線の矢は外し、幾何公差値にφは付けない(図1)。

図1

円筒軸の真直度指示例(母線指示)の図

円筒軸の真直度指示例(母線指示)

公差領域は、赤い領域になる(図2)。このとき、軸の回転方向の位置は任意である。

図2

円筒軸の母線の真直度公差領域

円筒軸の母線の真直度公差領域

真円度測定機を使った場合の円筒軸の真直度(母線)計測イメージを写真1に示す。
円筒軸の任意の1本の母線を測定する。
※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真1

円筒軸の真直度(母線)の計測イメージ画像

円筒軸の真直度(母線)の計測イメージ

2)円筒軸の真直度(中心線指示)

円筒軸の中心線に真直度を指示する場合、直径の寸法線に指示線の矢を当て、幾何公差値にφを付ける(図3)。

図3

円筒軸の真直度指示例(中心線指示)

円筒軸の真直度指示例(中心線指示)

公差領域は、赤い領域になる(図4)。

図4

円筒軸の中心線の真直度公差領域

円筒軸の中心線の真直度公差領域公差記入枠の要素

真円度測定機を使った場合の円筒軸の真直度(中心線)計測イメージを写真2に示す。
円筒軸の180度対向する任意の2本の母線からその平均値となる中心線を計算によって求める。
※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真2

円筒軸の真直度(中心線)の計測イメージ画像

円筒軸の真直度(中心線)の計測イメージ

次に、レアなケースであるが、平らな面の表面に母線の真直度を指示した例を見てみよう。

平面上の真直度(母線指示)

平面上の母線に真直度を指示する場合、高さや幅の寸法線と指示線の矢は外し、幾何公差値にφは付けない(図5)。

図5

平面上の真直度指示例(母線指示)

平面上の真直度指示例(母線指示)

公差領域は、赤い領域になる(図6)。このとき、測定する位置は任意である。

図6

平面上の母線の真直度交差領域を示した図

平面上の母線の真直度交差領域

3次元測定機を使った場合の平面上の真直度(母線)計測イメージを写真3に示す。
1本の直線となるよう平面上の任意の多数点を測定する。
※本例は一例であり、他の計測方法も存在する。

写真3

平面上の真直度(母線)の計測イメージ画像

平面上の真直度(母線)の計測イメージ