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1 設計から施工までのBIM…ほんとうか?
「RevitとARCHICAD」という二つのBIMアプリケーションを比較して使うというメインテーマに反して前回はRevitのみを取り上げた。また「無理して鉄骨モデルを作ってみた」と設計でなく施工サイドのテーマであった。そこで今回はARCHICADによる施工BIMをテーマとする。
セミナーで「設計から施工までのBIMです」と事例発表を聞くことがある。意地悪な筆者は「ほんとうかなぁ?」とつい疑ってしまう。突っ込んで質問してみると「施工BIMは施工計画だけに使います」「施工のシミュレーションをしました」「これからの課題です」「施工後にBIMモデルを作成しました」という実態が意外に多い。
今回は今年9月末にリリースされたARCHICAD 20を使って躯体施工図を作成、をテーマにする。施工図をBIMで100%作成する例だ。鹿島クレス株式会社の池田寛氏にヒアリングして今回の題材とさせていただいた。
ARCHICAD 20で作成された躯体施工図
2 設計のBIMモデルは使わない
次の図はARCHICAD BIM ガイドラインの実施設計モデルと施工モデルのパースを並べたものだ。鹿島クレスではARCHICADで作った設計のモデルがあっても参考程度にしか使わず、PDFや2D CADのDWGファイルを設計情報として使うことが多いとのことだ。
なぜ設計の3Dモデルを修正して施工モデルとしないのだろうか?
3Dモデルを修正するより2D CAD図面を下敷きにして入力した方が早い、ということと2Dの設計図書と3Dモデルに違いがあった場合、法的にも2Dの設計図書が正というのが現状だからということがまず理由として挙げられる。さらにここが重要なのだが、2Dの図面をもとに施工者の目で施工モデルを作成する過程で設計の意図を理解でき、施工者としての質疑や提案が行えるようになるという。
BIMの理想形は設計から施工まで一つのモデルで貫くことだろうか。一つのモデルで上流から下流までということにこだわっているとなかなかBIMを使いこなせない。設計モデルからでも2D CAD図面からでもいいから、平面、立面、断面で矛盾のない正しい施工図を作成するBIMツールとしてARCHICADを使おうというわけだ。
ARCHICAD BIMガイドライン実施設計モデル
上記の実施設計モデルの図面を基に作成された施工モデル
3 肝心なのは仕事の流れを変えること
設計図書を基に施工図を作成する、出来上がった施工図と作成した質疑書を使って設計-施工の打ち合わせを行うというのが、これまでの設計から施工への流れだった。それがBIMを使うことで変わった。
施工図の3Dモデルがある程度できた段階、まだ施工図という2Dの図面は完成していない段階で設計・施工図・現場のプロジェクトに関わるメンバーが集まる。そこで施工前に問題点を整理し解決する。
BIMを使って一つの画面を見ながら関係者の打ち合わせが行えるので、これから現場で起こる問題をあらかじめ解決することができるようになった。さらにこの打ち合わせを施工図の作成前に行うことで、設計から竣工まで全体のスピードアップにつながるということだ。
BIM施工図のモデルを使って打ち合わせ(写真提供:鹿島クレス)