2017年12月

実務者のためのCAD読本

深掘りBIM(1) 組み合わせて使うARCHICADとRevit

建築系CAD 講師:鈴木裕二

アプリケーションを使い込んだうえで、実務に使えることや実務では使えないので別の方法を採用する、というようなBIMについての「深い」話を紹介したい。

1.BIMを深掘りしよう

新しいテーマでの連載が始まった。テーマは悩んだあげくに「深掘りBIM」とした。よく分かってないのに「あれができる、これもできる」と誇大宣伝したり、逆に「あれができない、これができない」と批判したりしたくない。アプリケーションを使い込んだうえで、実務に使えることや実務では使えないので別の方法を採用する、というようなBIMについての「深い」話を紹介したい。直前に変更するかもしれないが、とりあえず5回のテーマを次のように考えた。

  1. 組み合わせて使うARCHICADとRevit
  2. 面積表、仕上表、建具表をBIMで作る(1)
  3. 面積表、仕上表、建具表をBIMで作る(2)
  4. BIMによる設計のコストを考える
  5. 世界の BIM 日本の BIM

2.ARCHICADの木造住宅モデル

ARCHICADで作られた木造住宅モデルを取り上げよう。「GRAPHISOFT」のホームページからトレーニングドキュメントとしてダウンロードできるモデルだ。

このモデルは木造だが鉄筋コンクリートの壁式構造に変更になったとして、構造モデルはRevitで作成する。なぜRevitかは後で解説するが、まずRevit構造モデルをARCHICADの木造住宅モデルと重ね合わせる手順を紹介する。

「GRAPHISOFT」のダウンロードサイト

グラフィソフトジャパン株式会社:「GRAPHISOFT」ダウンロードセンター

3.Revitで構造モデル

Revitで構造モデルを作成する。200mm厚の壁で構成された鉄筋コンクリートの壁式構造モデルだ。シンプルに壁、床、屋根だけの要素で、「窓」は建具のない開口のみの窓として構成されている。構造設計者としてモデリングしているので構造が成立するように壁の配置などを考えながらモデリングする。

またARCHICADモデルと重ね合わせしやすいように、Revit側で次のような工夫をした。

  1. 通芯(とおりしん)の名前と配置はARCHICADモデルと合わせる
  2. レベルの名前と高さもARCHICADモデルと合わせる
  3. 通芯の交点を原点(プロジェクト基準点)とする

Revit 2018で作成された構造モデル

4.RevitからIFCファイルに書き出す

できあがったRevit構造モデルをIFCファイルに書き出す。筆者の経験ではRevitの標準機能を使って書き出すのでなく、GRAPHISOFT製のRevitで動くARCHICAD専用ツールを使ったほうがトラブルを減らすことができる。「ARCHICAD Connection Add-In for Autodesk Revit」というツールをインストールするとRevitに図のようなリボンパネルが表示される。インストールはGRAPHISOFT(英文サイト)のダウンロード画面から行う。

IFCファイルへの書き出しはリボンの「アドイン」タブにある「ARCHICAD接続」パネルの「ARCHICADにエクスポート」で行う。

GRAPHISOFT(英文サイト)のダウンロード画面

GRAPHISOFT(英文サイト)のダウンロード画面

Revitに表示された「ARCHICAD接続」リボンパネル

書き出しのオプションは図のように設定した。既定値からは「建物要素として部品をエクスポート」を追加でチェックした。Revitで壁は階ごとに分けてモデリングしているので、今回は「フロアごとに壁、柱とダクトを分割」はチェックを入れていない。

IFCエクスポートオプションの設定

5.IFCファイルをARCHICADで確認

IFCファイルが正しく書き出されたか気になる。必須の手順ではないが、Revitから書き出されたIFCファイルをARCHICADで開いて確認しておこう。

ARCHICADでRevit構造モデルを開くときは「ファイルを開く」ダイアログボックスの「変換設定」でRevit構造モデルに最適化された「Revit Structure用インポート(ARCHICAD 21テンプレート.tplから)」を選んでおく。IFCファイルを開いても何も表示されないが、図のように「リノベーション フィルタ」で「04 新設」を選ぶことでモデルが現れる。Revitモデルが正しく書き出されている。

モデルが正しいことが確認されたら、いったんARCHICADで保存しておいてもいいのだが、ここではそのまま終了する。

「ファイルを開く」ダイアログボックスの「変換設定」

「リノベーション フィルタ」で「04 新設」を選ぶとモデルが現れる

6.ARCHICADの外部参照で構造モデルを表示

ARCHICADで先にダウンロードした木造住宅モデルを開き、そこに「ホットリンク」で構造モデルのIFCファイルを読み込む。ARCHICAD 21からIFCファイルをホットリンクで使えるようになった。[ファイル]メニューから[外部参照]→[ホットリンクを配置]で「ホットリンクを配置」ダイアログボックスを表示させ、[モジュールを選択]ボタンをクリックする。表示された「ホットリンクモジュールを選択」ダイアログボックスでRevitから書き出された目的の構造モデルのIFCファイルを指定する。「ホットリンクを配置」ダイアログボックスに戻り[ホットリンクを配置]ボタンで構造モデルを配置する。

[ファイル]メニューから[外部参照]→[ホットリンクを配置]

「ホットリンクを配置」ダイアログボックス

「ホットリンクモジュールを選択」ダイアログボックスで構造モデルのIFCファイルを指定

7.意匠モデルと構造モデルの整合性

前項の作業で構造モデルがARCHICADに「ホットリンク」されたが、まだどこにも表示されていない。

木造住宅モデルに構造モデルを重ね合わせて表示させるには、先の「IFCファイルをARCHICADで確認」の操作と同じように「リノベーション フィルタ」で「04 新設」を選ばないといけない。さらに、構造モデルのレイヤーを表示するようにすることも必要だ。Revitで作成された構造モデルのレイヤーは拡張名が「Revit Structure」となっているのですぐ分かる。

「Revit Structure」の確認画面

次の図が重ね合わさった状態だ。オレンジ色がRevitで作られた構造壁だ。窓・ドアなどの開口部は正しく重なっている。また木造住宅モデルにはなかった部分に壁が作られているのがよくわかる。構造上の要請を優先するのか、これから意匠設計者と調整が行われるという筋書きになる。

このようにホットリンクを使ってARCHICADとRevitでも、ARCHICADとARCHICADの重ね合わせでも全く同じことができる。

意匠モデルと構造モデルを重ね合わせ

8.プレキャスト製作図の自動生成

ARCHICADでも構造モデルを作ることができるのになぜRevitで作ったのか、それは「プレキャスト製作図作成ツール」を使いたかったからだ。オートデスク社製の「Structural Precast Extension for Revit 2018」がそのプレキャスト製作図作成ツールだ。サブスクリプションユーザーならオートデスク社のAPPストアから無償でダウンロードできる。

Autodesk App Store:Structural Precast Extension for Revit 2018

Structural Precast Extension for Revit 2018のダウンロード

このStructural Precast Extension for Revit 2018をインストールすると、Revitに図のようなリボンが表示される、リボンにある[Split]で壁を分割、[Reinforcement]で鉄筋を配置、さらに[Shop Drawings]で鉄筋リストを含む下図の製作図が作成される。Revitは設計の道具から製造・施工の分野のツールに確実に進化している。

Structural Precast Extension for Revit 2018 インストール画面

[Reinforcement]で鉄筋を配置

[Shop Drawings]で鉄筋リストを含む製作図を作成

監修・執筆

鈴木 裕二

1954年 大阪生まれ。アド設計代表、2011年 BIM LABOを設立する。おもな著書に『徹底解説 AutoCAD LT』シリーズ、『AutoCAD 神テク 105』(いずれもエクスナレッジ)、『ARCHICAD でつくる BIM 施工図入門』(鹿島出版会)など。