2020年 3月17日公開

【連載終了】企業のITセキュリティ講座

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炎上や風評被害が発生したときのベストな対応は

ライター/吉澤亨史

  • セキュリティ

SNSは広く普及し、企業が情報発信やPR、マーケティングのために活用することも珍しくなくなった。その一方で、ちょっとしたミスがいわゆる「炎上」を引き起こしてしまったり、風評被害に遭ったりするケースも増えている。ここでは、炎上や風評被害などの仕組みや対処法について紹介する。なお、一部内容については、株式会社ブランドコントロールの井原氏の講演を参考にしている。

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炎上や風評被害が発生する仕組み

2010年前後から、「バイトテロ」あるいは「バカッター」と呼ばれる行為が話題になっている。バイトテロとは、従業員やアルバイト店員などが勤務先で撮影した不適切な写真や動画、あるいは発言をSNSに投稿することを指す。店舗などの設備や来客に提供する食材などに悪さをしたり、著名人がプライベートで宿泊していることをホテルの従業員がツイートしたりするケースがある。

バカッターは、従業員に限らずSNSに不適切な投稿を行うことを指す。バイトテロのような行動を一般人がするもので、店舗の商品にイタズラしたり、進入禁止の場所に入り込んだりと、さまざまなケースがある。いずれにしてもSNS上でほかのユーザーによって拡散され、広く非難を浴びる「炎上」状態に発展する。2013年には、流行語大賞にノミネートされるほど話題となった。

バイトテロやバカッターの首謀者は、動機について「友達に見せたかった」などと話しているが、TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSは設定しない限り全世界に向けて発信される。「知らなかった」「うっかりしていた」などの言い訳は、あまりに稚拙である。結果、首謀者は雇用元などから罰金や損害賠償を請求されたり、特に悪質なものでは威力業務妨害罪で逮捕されたりするケースもある。

一方で、勘違いや思い込みによる「誤った情報拡散」も数多く発生している。これには自然災害後のデマや危険な地域の誤情報などがあり、安全な場所なのに観光客の足が遠のくといった風評被害につながることが多い。また最近では、あおり運転によるトラブルの加害者と一緒にいた女性に似ているとされ、全く関係ない女性に非難が集中するという事件も起きている。たとえ勘違いや思い込みであっても、SNSで拡散されると真実味を帯びてしまう。

データ出典元:総務省 新聞記事データベースにおけるSNS炎上関連記事件数の推移
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242210.html)

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実例と想定される影響

バイトテロやバカッターによる企業への悪影響は、計り知れないものがある。例えば、バイトテロが発生した外食系フランチャイズ店は、来客数が激減したうえに事件が起きた店舗は閉店に追い込まれている。風評被害においても前述のとおりだ。炎上により被害を受けるのは、企業のブランドであるといえる。企業価値におけるブランドの割合が高いほど、被害も大きくなる。

企業にとってブランド価値は無視できないポイントである。例えば、Googleは時価総額の40%がブランド価値といわれている。これは、もしGoogleのブランドイメージが損なわれた場合、時価総額が40%減ることを意味する。デザイナーブランドなどではブランド価値が時価総額の80%を占めることもあり、ブランドイメージが毀損(きそん)した場合の影響はより甚大だ。企業は自社のブランド価値とそれを守ることについて、これまで以上に取り組む必要がある。

一度インターネットに公開されてしまったネガティブな情報は「デジタルTATTOO」と呼ばれ、これを完全に消すことは非常に難しい。SNSで多くの人がシェアしたり引用したりするため、拡散される情報量は膨大になる。また、こうした情報が削除される前にコピーやキャプチャーして保存する「魚拓」も存在している。以前は「人のうわさも七十五日」といわれたが、現在は何年にもわたってネガティブな情報が残り続ける。

マーケティングの世界には「セブンヒッツ理論」というものがある。これは、人間は同じ情報を3回見ると認知し、7回見ると信用するというもの。さらに、特にネガティブな情報ほど信用されやすいという傾向もある。例えば、ドナルド・トランプ米大統領は、Twitterで年間約300件のツイートを行っているが、このうち約100件は悪口であり、そのうち20件弱がトヨタに対する悪口であった。そのほとんどは忘れられてしまうが、情報は残り、「トヨタ」で検索した場合にヒットしてしまう。企業にとってリスクとなり続けてしまうわけだ。

ACジャパンによる「デジタルTATTOO」のCM
(https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=753)

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実行すべき事前・事後対策

教育、エゴサーチ、謝罪のタイミング

ネガティブなキーワード、あるいはバイトテロのニュースなどが自社のブランドと組み合わされてしまったとき、その情報を押しつぶすために企業が自社のポジティブな情報を連続してインターネットに投稿するケースをよく見掛ける。しかし、これはあまり効果を期待できない。一方で、事件の発覚後すぐに謝罪会見を開くと、企業ブランドと経営陣が謝っている写真がひも付けられ、企業名を検索するたびにその写真が表示されることになってしまう。この場合は、まずは文書でおわびを公開し、一定の期間が経過してから謝罪会見を行うのが有効な対応といえる。

そもそもバイトテロが起きないように、インターネットリテラシーについて教育を行うことも重要な対策となる。アルバイトにまで徹底させることは難しいが、採用時にオンラインの教育コンテンツを視聴させるなど、方法はある。また、就業時間中はスマートフォンを携帯させないといった、ポリシーやコンプライアンスで事故を未然に防ぐことも有効といえる。

また、日ごろから自社ブランドや商品名、サービス名などをキーワードに検索を行うこともポイントとなる。いわゆる「エゴサーチ」と呼ばれる行為だが、これを毎日行うことで、ネガティブなツイートや書き込みを早期に発見し、対処することができる。早い段階でツイートを発見すれば、その内容が誤解や思い込みによるものであった場合、投稿者に直接説明することもできる。あるいは、自社サイトで「誤った情報が拡散されている」として周知することも可能になる。

インターネットが生活やビジネスの一部となっている現在は、良い情報も悪い情報も瞬時に世界中に広まる。このことを意識して、自社のブランド戦略をしっかりと固めておくとともに、従業員やアルバイトに対するインターネットリテラシーの教育も余さず実施する必要があるだろう。

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