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機械系CAD 講師:鈴木裕二

続 BIMアプリケーションの使いこなし

第2回:AutoCADとBIM似て非なるもの/全5回

AutoCADとBIM似て非なるもの:続 BIMアプリケーションの使いこなし第2回

1似て非なるもの

CADアプリケーションの代表格AutoCADと一般的なBIMアプリケーションは「似て非なるもの」だ。

例えば、AutoCADでは2本の線を引いて、「これは壁です」とあとから意味をつける。2本の線だけなら板かもしれないし、壁かもしれないが、文字や記号で壁であることを示す。RevitやArchiCADなどのBIMアプリケーションでは壁を作るコマンドがある。始点と終点を指示すればそこに壁ができあがる。

これだけを書けば明らかにBIMアプリケーションのほうが優れているということになるがそうでもない。AutoCADのほうが、自由度が高いという言い方もできる。壁か屋根か分からないようなグニャグニャに傾いた「壁」もAutoCADなら作れるが、BIMではある条件を持ったものだけが「壁」になる。

ここではAutoCADと同じオートデスク社製のBIMアプリケーションRevitを取り上げて、AutoCADと比較してみよう。

AutoCADを使った3次元モデリングについては、オートデスク社から出されている「AutoCAD 3Dハンドブック」が詳しい。下記のURLから無償でダウンロードできる。
http://www.autodesk.co.jp/adsk/servlet/pc/item?id=21999897&siteID=1169823

23Dモデリング(AutoCAD)

AutoCADで建築モデルを作ってみよう。難しいことはあまり考えないで作ることができる。線や円を作図する知識さえあれば、あとは「境界引き伸ばし(PRESSPULL)」コマンドとマウスの操作で、それらしい形状ができあがる。

「境界引き伸ばし(PRESSPULL)」コマンドがこの操作のミソである。ダイナミックUCS機能によって、立体のどこかの面に閉図形を作成し、その図形を境界引き伸ばし(PRESSPULL)コマンドで引っ張りだしたり、押し下げたりする。

辺や頂点をマウスでつかんで動かすと、3次元のモデルがぐにゃっと変形する。説明書なしで直感的に操作できる。

マウスの操作で辺を移動

マウスの操作で辺を移動

BIMアプリケーションでの3D自由形状はRevitではマス、ArchiCADではモルフと呼ばれる。

Revitのマスを使い、自由な3次元形状を作ってみよう。BIMなのでその自由形状を建物のデザインのもとにするのが目的だ。

残念ながらこのマスを作る操作は同じオートデスク社製品でありながら、その方法やインターフェースは異なる。最初のマスの作成がRevitは分かりにくい。ただし、マスをいったん作ってしまうと、あとの形状ハンドルをマウスでつかんで動かして変形するというような操作はおおむねAutoCADと同じだ。

BIMアプリケーションであるRevitは、作られたマスを建築要素に変換することができる。マスの面を選択して「壁」という要素に変換、あるいは全体を床レベルごとにスライスして床にすることができる。この機能を使って、この基本デザインを検討している段階で各階の床面積を得ることができる。

マスで粘土細工のように自由に建物の外観をデザインして、デザインが固まったら全体を壁や床、屋根などの建築要素に変換するというコンセプトのしっかりした機能だ。

なかなか狭い日本では粘土細工のように自由に外観をデザインして・・・というわけにはいかないが、一度はやってみたいデザイン手法だ。

各階に床が作られたマス(右)と3階の平面図(左)

各階に床が作られたマス(右)と3階の平面図(左)

3図面を作成

BIMなら平面図−立面図−断面図で矛盾が起きない、一つのモデルから図面が切り出されるので図面のミスはありえない、と言われるが、実はAutoCADでも3Dモデルから図面を切り出せる。切り出された図面はリンクしているので相互に矛盾は起きない。

3次元モデルから図面を切り出すにはAutoCADの「レイアウト」タブにある「ビューを作成」パネル内の「モデル空間からベースビュー(VIEWBASE)」コマンドを使う。図のような三面図とアイソメ図が自動で生成される。断面図を作成するコマンドも用意されている。

AutoCADのVIEWBASEコマンドで三面図とアイソメ図を作成

AutoCADのVIEWBASEコマンドで三面図とアイソメ図を作成

Revitではシートに平面図、立面図、断面図を配置して一枚の図面にすることができる。一つのモデルから図面(ドキュメント)を切り出すというBIMの基本機能だ。操作はビューを選んでシートの上にドラッグ&ドロップするという分かりやすい方法だ。

Revitでビューをシートに配置

Revitでビューをシートに配置

4シミュレーション

AutoCAD単体で実行できるシミュレーションは限られている。構造計算、FEM解析などはAutoCAD上で動作する別のアプリケーションが必要だ。太陽光のシミュレーションならAutoCAD単体でもできる。

ここでは建物の位置を兵庫県の西宮市とし、3月14日午前11時の日影を表示してみた。建物の位置は道路地図もしくは航空写真を使って正確に指示することができる。

AutoCADで地図上の位置を指定して太陽光のシミュレーション

AutoCADで地図上の位置を指定して太陽光のシミュレーション

Revitではレンダリング機能を利用して、日影のシミュレーションを行う。残念ながらAutoCADほど精密な地図を表示させて、位置を指定することはできない。レンダリングを行わないと影が表示されないので、時間もかかってしまう。この機能だけとればRevitよりAutoCADのほうが使いやすいようだ。

Revitではレンダリングを使って太陽光をシミュレーション

Revitではレンダリングを使って太陽光をシミュレーション

光のシミュレーションには太陽だけでなく人工光源もある。AutoCADもRevitも人工光源の配光データを細かく設定することができる。薄暗い部屋の間接照明に、あるメーカーの電球を使えば、どのように見えるかというようなシミュレーションが可能だ。

5アニメーション

ウォークスルー・アニメーションという手法がある。

プレゼンテーションなどで、実際に建物の周りや内部を歩いているような動画を見せる手法だ。パスと呼ばれるカメラの動くラインと、カメラのレンズが向くターゲットの方向を指定すれば、アニメーションができあがる。

AutoCADでは「移動パスアニメーション(ANIPATH)」コマンドで、カメラとターゲットのポリラインを指定するだけで、それらしいアニメーションを作ることができる。細かな設定を行えばマテリアルを反映したレンダリングをしながらのアニメーション作成も可能だ。ただし、一コマずつレンダリングするのでそれなりの時間はかかってしまう。

AutoCADのANIPATHコマンドでウォークスルー・アニメーションを作成

AutoCADのANIPATHコマンドでウォークスルー・アニメーションを作成

Revitではさらに簡単にアニメーションを作ることができる。カメラのパスを作成するだけで、ターゲットは自動で設定される。Revitでも高品質のアニメーションを作成するには一コマずつのレンダリングが必要になり時間がかかってしまう。

Revitの中でアニメーションを再生

Revitの中でアニメーションを再生

6勝るとも劣らない

冒頭にAutoCADとRevitを「似て非なるもの」と書いたが、どうだろう?

「勝るとも劣らない」と表現したほうが正解かもしれない。BIMアプリケーションでないAutoCADは建築オブジェクトこそ持っていないが、表現力の豊かさやツール使いやすさではRevitに「勝るとも劣らない」と言い切ってもいいだろう。

精密機械から建築、プラント、さらには地形まで作成できるAutoCADならではの機能を紹介した。あらためて筆者は、BIMが進んでもAutoCADを捨てられそうにはないと思うのだが、どうだろう?

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