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機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

5th STEP 第1回:寸法(サイズ)と幾何(カタチ)の違い/全5回

世界で戦うための製図技術 5th STEP【1】 寸法(サイズ)と幾何(カタチ)の違い

1寸法(サイズ)と幾何(カタチ)の違い

4thステップでは、設計意図として重要寸法を示唆するための寸法公差の考え方や記入法、また表面粗さの記入テクニックを学んだ。
5thステップでは、さらに設計意図を明確にするためのテクニックである幾何公差について解説する。この幾何公差は、海外で部品を製作するうえで必要不可欠なものであり、図面を描く設計者以外に、加工や部品検査の担当者までが理解しなければいけない内容である。

第1回は、寸法公差と幾何公差の違いについて説明する。幾何公差を理解するうえで、寸法公差と幾何公差の違いを知っておかないと、解釈に混乱を生じるからである。

寸法の概念

JISによると、「寸法とは決められた方向での対象部分の長さ、距離、位置、角度、大きさを表す量」と定義される。
また、寸法公差のうち、「長さ寸法公差は、形体の実寸法(2点測定による)だけを規制し、その形状偏差(例えば、円筒形体の真円度、真直度または平行二平面の表面の平面度)は規制しない(ISO 286/1参照)。」、「角度寸法公差は、線または表面を構成している線分の一般的な姿勢だけを規制し、それらの形状偏差を規制するものではない。」と定義される。

一般的には寸法計測にノギスが使われる。

ノギスについての図解

ノギスを使った寸法計測例を見て、寸法が2点間で測定されていることを理解しよう(図1)。

図1

2点間による寸法計測例

2点間による寸法計測例

寸法は簡便に測定できるメリットがある半面、デメリットも存在する。
そのデメリットとは、カタチの崩れを判断できない点なのである。

その実例を見てみよう(図2)。
例えば、細長い軸を設計する場合、CAD画面上には、真っすぐな円柱を描く。
しかし、実際に加工されたものを見てみると、加工反力や切削による熱の影響などにより反った軸が手元に届く可能性がある。
直径に寸法公差を指定する場合、設計者が予測する形状は、直径のみがばらつきによって変化する状態である。
しかし、直径の大きさがばらつく以外に、軸が反るというカタチの崩れを失念し、想定外の物理的な占有領域になってしまうことがある。

図2

軸のサイズばらつきとカタチのばらつき

軸のサイズばらつきとカタチのばらつき

独立の原則(JIS B 0024)

JIS製図の規則(JIS B 0024:1988 製図−公差表示方式の基本原則)によると、寸法、幾何特性、表面性状は、それぞれ独立であるという原則に基づき評価される(図3)。これを独立の原則と言う。

独立の原則とは、「図面上に個々に指定した寸法および幾何特性に対する要求事項は、それらの間に特別の関係が指定されない限り、独立に適用する。それゆえ何も関係が指定されていない場合には、幾何公差は形体の寸法に無関係に適用し、幾何公差と寸法公差は関係ないものとして扱う」と定義される。

図3

寸法、幾何特性、表面性状の図解

寸法、幾何特性、表面性状

つまり、設計者の視点では、寸法公差の数値と幾何公差の数値に関連はなく、公差の数値は独立して図面に指示することができるのである。
また、部品検査の視点では、寸法公差と幾何公差の検査時に、それぞれの公差の数値にかかわらず、独立して検査することを意味しているのである。

この独立の原則を適用するに当たって、国家規格であるJISに従うのは当然として、どこにも明記しない企業や、独立の原則すら知らない企業も存在するかもしれない。
特に海外企業と取引する場合は、事前に打ち合わせをして規格を明確にしておく必要がある。なぜなら、独立の原則の考え方は、ISOが規定する国際標準であるにもかかわらず、アメリカでは独立の原則を適用しないASME(アメリカ機械学会)のルールを適用する場合があるからである。

JIS B 0024によると、「独立の原則を適用する図面には、図面の表題欄の中、または付近に次のように記入しておかなければならない」と決められている。
JIS B 0024はISO8015を内容の変更なく和訳したものであるため、海外の企業に向けて図面を描く場合は、「JIS B 0024 (ISO 8015)」という文言を表題欄、あるいはその付近に明確に表示するとよい(図4)。

図4

独立の原則を表わした公差方式の表示

独立の原則を表わした公差方式の表示

幾何公差を学習するうえで、寸法公差との混同が理解を妨げる障壁になる。
日本では国際標準である"独立の原則"を適用することを理解し、寸法公差と幾何公差に関連を持たせる必要がないことを理解しよう。
例外:寸法公差と幾何公差に関連を持たせるものに、最大実体公差などがある。

幾何公差の要求は、加工によってカタチが崩れることが原因である。
次回は、幾何公差を使いこなすうえで、なぜ加工によってカタチが崩れるのか、その理屈を解説しよう。

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