2015年 6月 1日公開

【連載終了】実務者のためのCAD読本

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照明シミュレーションは設計の道具か?【BIMの最新事情レポート/第1回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

シリーズ記事

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1 新しいテーマ

今回から新しいテーマ「BIMの最新事情レポート」に挑戦する。「へぇそうなんだ」と読者の皆さんに思ってもらえるようなテーマを探してきて、できるだけ掘り下げて紹介したいと思う。
とりあえず連載のテーマとして次のようなものを挙げてみた。順序は変わるかもしれないが、おおむねこのような内容を取り上げたいと考えている。

  • 照明シミュレーションは設計の道具か?
  • 意匠-構造-設備モデルを重ねるか重ねないか?
  • 設備モデルの入力には手間がかかるが価値はあるか?
  • BIMでプレキャスト構造を画期的に合理化できるか?
  • 現場では誰がどんな失敗をするか、BIMで防げるか?
  • BIMによる設計・施工で、施主は喜んだか?

2 照明シミュレーションの話をもう一度

前の連載『BIMを本気で使いこなす』の第4回「BIMで改修設計をやってみた(2)」でArchiCADを使った保育所の照明シミュレーションを紹介した。

BIMを本気で使いこなす 第4回:BIMで改修設計をやってみた(2)

ArchiCAD 18から登場したCineRender by MAXONというレンダリングのエンジンを使えば、照明器具メーカーが提供している配光データのIESというファイルを読み込んで照度のシミュレーションができる。照明の専門家ではない建築の設計者も、照明器具の選定や配置に悩まなくてすむ。建築の設計者はどんどん自分の手で照明シミュレーションをしようというような話だった。

ArchiCADによる照明シミュレーションを行った画像

ArchiCADによる照明シミュレーション

同じ話をいくつかのセミナーでも話した。すると読者やセミナー参加者からするどい質問やご指摘をいくつか頂いた。ここではそれらに答えて、さらに照明シミュレーションは設計の道具として意味があるのか、もう一度考えてみたい。

3 Revitでも配光データは使えるか?

まず多かったのはRevitでも同じことができるのかという質問だ。ArchiCADとRevit、BIM製品のライバルのように言われているが、ゼネコンや設計会社でArchiCADとRevitの両方を使っているところも多い。

Revitでも配光データのIESファイルを使うことができる。オートデスク社Webサイト「Revit Products-Learn & Explore-光源用の IES ファイルを指定する」に詳細が掲載されているが、手順は難しくない。適当な照明ファミリを開いて、光源定義で「照明の分散」を「フォトメトリック ウェブ」として図のように配光データのIESファイルを読み込むだけだ。色温度の設定も「K(ケルビン)」という単位を使って設定できるので、照明器具メーカーが出している3,500Kの「温白色」と4,000Kの「ナチュラルホワイト」の2種類のLEDランプを使うようにした。

これで配光データを再現する照明器具2種類を作ってみた。

オートデスク社Webサイト「Revit Products-Learn & Explore-光源用の IES ファイルを指定する」

配光データを使った照明ファミリをRevitで作成した画面

配光データを使った照明ファミリをRevitで作成

4 Revitで照明シミュレーション

Revitでこの照明器具を配置し、レンダリングしてみよう。建物のデータはArchiCADからIFCファイル経由でRevitに持ってきた。

建物の形状はArchiCADから読み込まれたが、マテリアルはRevitで特に与えていないので、石こうで作ったモデルのように真っ白になっている。

色温度の異なる照明器具を使って、その結果の比較も行った。「保育所には3,500Kの方がいいな」というシミュレーションができる。もちろん本来の目的のどの辺りまで明るいか、影はどこに出るかという照度のシミュレーションもできる。当たり前のことだが、ArchiCADと比べてほぼ同じ結果になっている。

色温度3,500Kの「温白色」の照明器具を使用したシミュレーション画面

色温度3,500Kの「温白色」の照明器具を使用

色温度4,000Kの「ナチュラルホワイト」の照明器具を使用したシミュレーション画面

色温度4,000Kの「ナチュラルホワイト」の照明器具を使用