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建築系CAD 講師:鈴木裕二

BIM再入門−最適なツールの正しい使い方

5 躯体施工図を作成する…ARCHICAD 20を使って/全5回

BIM再入門−最適なツールの正しい使い方【5】 躯体施工図を作成する…ARCHICAD 20を使って

1設計から施工までのBIM…ほんとうか?

「RevitとARCHICAD」という二つのBIMアプリケーションを比較して使うというメインテーマに反して前回はRevitのみを取り上げた。また「無理して鉄骨モデルを作ってみた」と設計でなく施工サイドのテーマであった。そこで今回はARCHICADによる施工BIMをテーマとする。

セミナーで「設計から施工までのBIMです」と事例発表を聞くことがある。意地悪な筆者は「ほんとうかなぁ?」とつい疑ってしまう。突っ込んで質問してみると「施工BIMは施工計画だけに使います」「施工のシミュレーションをしました」「これからの課題です」「施工後にBIMモデルを作成しました」という実態が意外に多い。

今回は今年9月末にリリースされたARCHICAD 20を使って躯体施工図を作成、をテーマにする。施工図をBIMで100%作成する例だ。鹿島クレス株式会社の池田寛氏にヒアリングして今回の題材とさせていただいた。

ARCHICAD 20で作成された躯体施工図

ARCHICAD 20で作成された躯体施工図

2設計のBIMモデルは使わない

次の図はARCHICAD BIM ガイドラインの実施設計モデルと施工モデルのパースを並べたものだ。鹿島クレスではARCHICADで作った設計のモデルがあっても参考程度にしか使わず、PDFや2D CADのDWGファイルを設計情報として使うことが多いとのことだ。

なぜ設計の3Dモデルを修正して施工モデルとしないのだろうか?

3Dモデルを修正するより2D CAD図面を下敷きにして入力した方が早い、ということと2Dの設計図書と3Dモデルに違いがあった場合、法的にも2Dの設計図書が正というのが現状だからということがまず理由として挙げられる。さらにここが重要なのだが、2Dの図面をもとに施工者の目で施工モデルを作成する過程で設計の意図を理解でき、施工者としての質疑や提案が行えるようになるという。

BIMの理想形は設計から施工まで一つのモデルで貫くことだろうか。一つのモデルで上流から下流までということにこだわっているとなかなかBIMを使いこなせない。設計モデルからでも2D CAD図面からでもいいから、平面、立面、断面で矛盾のない正しい施工図を作成するBIMツールとしてARCHICADを使おうというわけだ。

Revit 2017に表示された構造モデル

ARCHICAD BIMガイドライン実施設計モデル

上記の実施設計モデルの図面を基に作成された施工モデル

上記の実施設計モデルの図面を基に作成された施工モデル

3肝心なのは仕事の流れを変えること

設計図書を基に施工図を作成する、出来上がった施工図と作成した質疑書を使って設計−施工の打ち合わせを行うというのが、これまでの設計から施工への流れだった。それがBIMを使うことで変わった。

施工図の3Dモデルがある程度できた段階、まだ施工図という2Dの図面は完成していない段階で設計・施工図・現場のプロジェクトに関わるメンバーが集まる。そこで施工前に問題点を整理し解決する。

BIMを使って一つの画面を見ながら関係者の打ち合わせが行えるので、これから現場で起こる問題をあらかじめ解決することができるようになった。さらにこの打ち合わせを施工図の作成前に行うことで、設計から竣工まで全体のスピードアップにつながるということだ。

BIM施工図のモデルを使って打ち合わせ(写真提供:鹿島クレス)

BIM施工図のモデルを使って打ち合わせ(写真提供:鹿島クレス)

4見上げ図は切断面の設定で

BIM施工図についてARCHICADの使いこなしテクニックも紹介しておこう。
筆者は本連載でARCHICADによるコンクリート躯体施工図の「見上げ図」を「3Dドキュメント」を使って作成すると解説した。

鹿島クレスのコンクリート躯体施工図ではこの「3Dドキュメント」を使わずに、ビュー設定などで「見上げ図」を実現している。

コンクリート躯体施工図「1F見上図」

コンクリート躯体施工図「1F見上図」

「見上げ図」を設定している「1F見上図」の「ビュー設定」と「平面図の切断面設定」ダイアログボックスを次の図に示す。

「ビュー設定」では「レイヤーセット」を専用の「1F見上図」にして、「モデル表示オプション」で表現を調整している。「平面図の切断面設定」では1Fのフロアから1100の位置を切断面として、この切断面から上の2Fフロアまでを表示するようにしている。

「1F見上図」の「ビュー設定」

「1F見上図」の「ビュー設定」

「1F見上図」の「平面図の切断面設定」

「1F見上図」の「平面図の切断面設定」

5躯体のレイヤーは階ごとに変える

もう一つは階ごとに躯体のレイヤー名を変え、階ごとのレイヤーセットを作成するというテクニックだ。例えば次の図では全てのレイヤーが表示された状態と、レイヤーセット「1F見上図」を適用した状態を比較している。

この方法によって建て方順に3D表示したり、階ごとのコンクリートボリュームを表にしたりすることもできる。

全てのレイヤーを表示した3Dモデル

全てのレイヤーを表示した3Dモデル

レイヤーセット「1F見上図」を適用した3Dモデル

レイヤーセット「1F見上図」を適用した3Dモデル

6できるだけARCHICAD標準のまま

このように書いてくるととても大変なARCHICAD設定を行っているように思えるが、実際はそうでもない。ARCHICADの標準ライブラリを使うために、ARCHICADデフォルトのペンセットや材質は大きく変えていない。デフォルトに対していくつか必要なものを追加しているだけだ。

どうしても施工図用に大きく入れ替えなければいけないのはレイヤーとレイヤーセット、線種、複合構造、断面形状だ。複合構造などは特に堅苦しい命名ルールを決めずに、現場ごとに分かりやすい名前でそのつど作ればいいという発想だ。

ライブラリでは柱、梁、スラブのラベルとゾーンスタンプを特定のものにしている。施工図で使われる記号は会社によってその標準が違うので仕方がない。

このようにBIMという道具を柔軟に使いこなすことで施工図を作成することができる。これなら胸を張って「施工図をBIMで100%作っている」と言えるだろう。

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