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機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

7th STEP 第1回:最大実体公差方式とは/全5回

世界で戦うための製図技術 7th STEP【1】 最大実体公差方式とは

1最大実体公差方式とは

前回までの6thステップでは、具体的な幾何特性14種類についての解釈と記入テクニックについて解説した。
今回の7thステップ第1回は、最大実体公差方式を理解するうえで事前に必要な知識となる「最大実体サイズ」と「最小実体サイズ」の違い、「独立の原則」と「包絡の条件」との違いや、図面への表記法について説明する。

最大実体公差方式とは

JIS B 0023(製図−幾何公差表示方式−)によると、最大実体公差方式は次のように説明されている。
注)2016改正JISに伴い、以下の文章内の文言で「長さ」のことを「サイズ」と書き換えている。

以下、JIS B 0023より引用
 例えば、二つのフランジのボルト穴とそれらを締め付けるボルトとのように、部品の組立は、互いにはめ合わされる形体の実サイズと実際の幾何偏差との間の関係に依存する。
 組み付ける形体のそれぞれがその最大実体サイズ(例えば、上の許容サイズの軸及び下の許容サイズの穴)であり、かつ、それらの幾何偏差(例えば、位置偏差)も最大であるときに、組立すきまは最小になる。
 組み付けられた形体の実サイズがそれらの最大実体サイズから最も離れ(例えば、下の許容サイズの軸及び上の許容サイズの穴)、かつ、それらの幾何偏差(例えば、位置偏差)がゼロのときに、組立すきまは最大になる。
 以上から、はまり合う部品の実サイズが両許容限界サイズ内で、それらの最大実体寸法にない場合には、指示した幾何公差を増加させても組立に支障をきたすことはない。
 これを“最大実体公差方式”といい、記号(まるエム)によって図面上に指示する。

上記を簡単に説明すると次のようになる。
単純に組めればよい性質の部品間において、穴と軸のサイズがそれぞれ最もすきまができる状態、つまり組立マージンが最大になる状態のとき、その隙間分を幾何公差の公差領域に加えてあげましょうというものである。
アメリカでは、この増加分の幾何公差をボーナス公差と呼んでいる。

最大実体公差は経済的利点をもたらすが、逆に欠点となることもあるので、次の場合には適用しない。

  • ・リンク機構や歯車の中心間距離など運動機構
  • ・表面形体である平面または母線(サイズ形体ではないもの)
  • ・しまりばめなど、物理的に互換性を求めることができないもの

1. サイズの考え方

JIS B 0420-1:2016によって、従来使っていた「(長さに関する)寸法」という言葉を「サイズ」と呼ぶように変更となり、要素ごとの呼び方も下記のように変化している(図1)。

図1

サイズの呼び方

サイズの呼び方

2. 最大実体状態と最大実体サイズ

最大実体状態 (MMC:maximum material condition) とは、形体のどこにおいても、その形体の実体が最大となるような許容限界サイズ、例えば、最小の穴径、最大の軸径を持つ形体の状態をいう。
最大実体サイズ(MMS:maximum material size) とは、形体の最大実体状態を決めるサイズを言う(図2)。

図2

最大実体サイズ

最大実体サイズ

3. 最小実体状態と最小実体サイズ

最小実体状態 (LMC:least material condition) とは、形体のどこにおいても、その形体の実体が最小となるような許容限界サイズ、例えば、最大の穴径、最小の軸径を持つ形体の状態をいう。
最小実体サイズ(LMS:least material size) とは、形体の最小実体状態を決めるサイズを言う(図3)。

図3

最小実体サイズ

最小実体サイズ

最大実体サイズと最小実体サイズは、上下の許容サイズの数値だけを見ると、頭が混乱してどちらか分からなくなる。

そのため、数値ではなく体積で考えるとよい。

最大実体サイズは、部品重量が重たくなるサイズ。
・軸(凸)形状の場合、上の許容サイズとなる
・穴(凹)形状の場合、下の許容サイズとなる

最小実体サイズは、部品重量が軽くなるサイズ。
・軸(凸)形状の場合、下の許容サイズとなる
・穴(凹)形状の場合、上の許容サイズとなる

4. 独立の原則と包絡の条件

独立の原則とは、
「図面上に個々に指定したサイズ及び幾何特性に対する要求事項は、それらの間に特別の関係が指定されない限り、独立に適用する。
それゆえ何も関係が指定されていない場合には、幾何公差は形体のサイズに無関係に適用し、幾何公差とサイズ公差は関係ないものとして扱う。
したがって、もし、

  • −サイズと形状又は
  • −サイズと姿勢又は
  • −サイズと位置

との間に特別な関係が要求される場合には、そのことを図面上に指定しなければならない」(JIS B 0024) と定義される。

サイズ(長さや直径など)は、特に指定がない限り局部サイズ(形体の任意の断面における個々の距離、すなわち任意の相対する 2 点間で測定したサイズ)を意味する。
独立の原則に従う場合、サイズと幾何特性は別に考えるため、軸の場合、最大実体サイズである「φ10.1」に加えて幾何偏差が加わるため、その物理的占有スペースは「φ10.1」を超えてしまうことを意味する(図4)。

図4

独立の原則の考え方

独立の原則の考え方

包絡の条件とは、円筒面または平行二平面によって決められるサイズ形体に対して適用する。
この条件は、形体がその最大実体サイズにおける完全形状の包絡面を越えてはならないことを意味している。
ISOあるいはJISのルールとして、包絡の条件を適用する場合は、サイズ公差に続けて(まるイー)を記入する(図5)。

図5

包絡の条件の考え方

包絡の条件の考え方

図4と図5に示した物理的占有領域(赤い領域)のことを実効サイズと言う。
実効状態 (VC:virtual condition) とは、図面指示によってその形体に許容される完全形状の限界であり、この状態は、最大実体サイズと幾何公差との総合効果によって生じるものである。
実効サイズ (VS:virtual size)とは、形体の実効状態を決めるサイズを言う。

5. 最大実体公差方式の表記

世界的に図面を描く場合、特に指定しない限り独立の原理を適用する。
一部のサイズに最大実体公差方式を適用する場合、幾何公差の数値に続けて、場合によっては公差記入枠内のデータム記号に続けて(まるエム)を記入する。
このMは、MMR(Maximum Material Requirement)の頭文字で、最大実体公差方式を意味する。
最大実体公差方式を適用する場合、次のように公差値に続ける場合とデータム記号に続ける場合がある(図6)。

図6

最大実体公差の指示方法

最大実体公差の指示方法

最大実体サイズは、軸(凸)形状と穴(凹)形状では、数値が逆転する。
最大実体公差方式では、サイズ公差と幾何公差を同時に満足する「包絡の条件」を適用する。
最大実体公差方式を適用する場合、適用する形体の幾何公差に続けて(まるエム)を記入する。

次回は、サイズ公差と幾何公差を同時に考える場合に、それらの関係を視覚的に検討できる動的公差線図を解説しよう。

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