2017年 2月 1日公開

実務者のためのCAD読本

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世界のBIM、日本はBIM先進国か? 後進国か? Autodesk University 2016レポート【極めるBIM/第1回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

シリーズ記事

1 本当にできるの? やっているの?

今回から新しいシリーズ「極めるBIM」を始める。

本音で言えば「極めるBIM」と言うより「ほんまかいな? BIM」だ。BIMを使っていますというレポートをあちこちで見るようになってきた。でも「本当にできるの? やっているの?」と疑うこともある。上からの指示だから、コンペだから、仕様書に書いてあるから、と仕方なくBIMを使っている「ふり」の「なんちゃってBIM」かもしれない。

またBIMはオペレーターや外注に任せて設計者はBIMアプリケーションを使えなくてもいい、現場監督はBIMアプリケーションを使えなくてもビューアーだけ使えればいいという声も聞く。BIMを取り入れた設計・建設の職能の近未来像はどうあるべきかまだ確立していない。

このあたりをこれから5回のシリーズで考えたい。テーマは次のように決めた。

  1. 世界のBIM、日本はBIM先進国か? 後進国か? Autodesk University 2016レポート
  2. 意匠図を極める … BIMでも図面は必要だ
  3. 構造設計を極める … 構造図を作るだけじゃないBIM
  4. 施工を極める … 施工図から施工コンテンツまでのBIM
  5. BIM教育を極める … 大学、専門学校、企業内でのBIM教育

2 Autodesk University 2016

11月15日から16日まで米国ラスベガスで開催されたAutodesk Universityに、筆者も参加した。24回目になる今年の参加者は15カ国から約1万人、巨大イベントだ。今年のキーワードは「人工知能と機械学習」、「ジェネレーティブデザイン(Generative Design)」、「バーチャルリアリティ(VR)」、「クラウドプラットフォーム」といったところだろうか。

初日の基調講演ではオートデスク社CTOのJeff Kowalski氏がジェネレーティブデザイン(Generative Design)の例として2層のオフィスのフロアプランを紹介していた。数千ものプランをコンピューターに自動生成させ、そのうち働く人にとって最適なものを絞り込んで提案させる。さらに出来上がったプランはAutodesk LIVEを使ってバーチャルリアリティ(VR)として、そのオフィスを使う予定の人たちに疑似体験してもらうものだ。
基調講演はこういった新技術を味方にして未来を切り開こうという熱いメッセージだ。基調講演動画は下記で誰でも見ることができる。

※リンク先の動画掲載ページの「Part 1 - Jeff Kowalski」で基調講演動画が視聴できます。

Autodesk University Webサイト:「7239: AU Opening Keynote」

Autodesk University 2016基調講演

Autodesk University 2016基調講演

3 ジェネレーティブデザインそしてVR

これからのBIMを考えるとき、注目する技術はバーチャルリアリティ(VR)だ。筆者としては、VRはゲームで使われるぐらいの認識しかなかったのだがどうも違うようだ。

BIMアプリケーションを使ってコンピューターの中に建物モデルを作成する。それを一般のディスプレイでグルグル回して3Dで見せるだけでなく、VR用のコンテンツとして出力する。その出力されたファイルをヘッドマウントディスプレイで見ると、まさに建物の中に立っている感覚で歩き回れる。床に置かれたマーカーをクリックして場所も移動できる。仕込んでおけば床の材質をあれこれ選んで「体験する」ことも可能だ。オートデスク社の製品ではAutodesk LIVEを使えばRevitと組み合わせてこれができる。

クライアントとこのVRで打ち合わせできたら楽しいだろう。病院の設計で医療関係者とVRで、使い勝手を確認できたら効率的だ。いやクライアントだけじゃない、現場打ち合わせで施工会社とこれで打ち合せしたらどうなるだろう。水道の水栓を触りながら「もう少しこれは低くした方がいいですね、これくらい低くしてみましょう」などと打ち合わせするのだろうか。

Autodesk University 2016展示会場でVR体験

Autodesk University 2016展示会場でVR体験

4 Dynamoを中心にしたワークフロー

あるクラスで驚いたのは次の図だ。3D Integrated Structural Analysis and Design Workflow(3Dで統合された構造解析とデザインワークフロー)というテーマで、世界的な総合エンジニアリング会社であるAECOM社の技術者による発表で使われた図だ。

この図は現状ではなく将来像だが、真ん中にあるのはDynamoだ。Dynamoというのはグラフィカル・プログラミング・インターフェースと言われるツールだ。簡単に言ってしまえば絵を描けばプログラムが出来上がるというソフトウェア開発ツールだ。

筆者はこのDynamoはあくまで入力ツールで、Revitとつないで先に紹介したジェネレーティブデザインなどに使うツールだと理解していた。パラメーターを変えて屋根の形状を決めるというツールだ。構造計算についても補助的な入力ツールという理解をしていた。

ところがこの図は真ん中にDynamoが座っている。デザイナーからRevitのデータをDynamoが受け取り構造計算アプリケーションに渡す、できた結果はDynamoに返り、そのまま建物全体のRevitモデルに反映する。プログラムを未来の構造設計の中心にしようという提案だろう。

構造設計ワークフローの将来像

構造設計ワークフローの将来像