2017年 7月 1日公開

【連載終了】実務者のためのCAD読本

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

各種幾何特性に示す最大実体公差の使い方【世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 7th STEP/第3回】

機械系CAD 講師:山田学

シリーズ記事

【お知らせ】がんばる企業応援マガジン最新記事のご紹介

3 各種幾何特性に示す最大実体公差の使い方

前回の、「7th STEP 第2回:動的公差線図の使い方/全5回」では、真直度に最大実体公差を適用した図面例と、その動的公差線図を確認した。

2017年5月「世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 7th STEP 第2回:動的公差線図の使い方/全5回」

今回は、姿勢偏差である直角度、位置偏差である同軸度と位置度への最大実体公差を適用した図例と動的 公差線図について説明する。
形状偏差である真直度との違いは、姿勢偏差と位置偏差はデータムを必要とすることである。
データムの有無によって、変化するものがあるかを確認しよう。

1. 直角度への最大実体公差の適用

段付き軸1をボス2に隙間ばめで挿入する構造を考える。
それぞれのサイズ公差が設定され、挿入部の隙間も小さいことから、穴と軸それぞれに反りやうねりに加えて直角度の傾きが大きいと、互いの基準面(それぞれのデータムA面)を密着させるまで挿入できない恐れがある(図1)。

図1

直角度を指示した部品の公差記入例

直角度を指示した部品の公差記入例

サイズ公差と直角度の関係のみを動的公差線図に表すと次のようになり、最悪状態でもギリギリ組み立てられることが分かる(図2)。

図2

直角度の動的公差線図(サイズ公差と幾何公差の関係のみ)

直角度の動的公差線図(サイズ公差と幾何公差の関係のみ)

ここで、最大実体状態でない場合に幾何公差を増やすことができる領域を赤い領域で示すと、次のようになる(図3)。

図3

直角度の動的公差線図(最大実体公差方式を適用した場合)

直角度の動的公差線図(最大実体公差方式を適用した場合)

図3の動的公差線図から、最大実体公差を適用した図面例を示す(図4)。

図4

直角度に最大実体公差を適用した部品の図面例

直角度に最大実体公差を適用した部品の図面例

2. 同軸度への最大実体公差の適用

段付き軸1と段付き穴を持つボス2において、それぞれの大径側をデータム基準として、小径側を隙間ばめで挿入する構造を考える。
それぞれのサイズ公差が設定され、大径側と小径側を同時に挿入する必要があるため、それぞれに反りやうねりに加えて同軸度のずれが大きいと、ボスに段付き軸の全てを挿入できない恐れがある。
ここで、それぞれの部品のデータムとなる大径側のサイズには、挿入を保証するために、あらかじめ「包絡の条件 (まるイー)」を使って指示している(図5)。

図5

同軸度を指示した部品の公差記入例

同軸度を指示した部品の公差記入例

幾何特性を与えている該当部のサイズ公差と同軸度の関係のみを動的公差線図に表すと次のようになり、最悪状態でもギリギリ組み立てられることが分かる(図6)。

図6

同軸度の動的公差線図(サイズ公差と幾何公差の関係のみ)

同軸度の動的公差線図(サイズ公差と幾何公差の関係のみ)