2017年 8月 1日公開

【連載終了】実務者のためのCAD読本

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構造設計を極める…構造図を作るだけじゃないBIM【極めるBIM/第4回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

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1 構造のBIMモデルをやりとりしたい

構造計算ソフトで苦労して建物の構造モデルを入力し、次にBIMアプリケーションでこのモデルを入力するとする。「同じことを2度入力するのは面倒、なんとかデータをもってこれないの?」という声をよく聞く。

筆者としては「2度入力してもいいでしょ、もう1度違う目で見ることができるよ」と答えたいが、効率性を考えるとそうはいかないようだ。構造計算に使ったモデルをそのままBIMアプリケーションで再現できれば確かに構造モデルづくりが簡単になる。

BIMアプリケーションの標準ファイルフォーマットとしてはIFC(Industry Foundation Classes)というファイル形式がある。少し古くなるが、筆者は以前このIFCファイルの使い方と問題点について解説した。

BIMアプリケーションの使いこなし ~適材適所の使いこなし~ 第3回:IFCを使ってデータ互換(前編)/全5回

BIMアプリケーションの使いこなし ~適材適所の使いこなし~ 第4回:IFCを使ってデータ互換(後編)/全5回

一方、ST-Bridgeという日本の建築構造用のフォーマットがある。ST-Bridgeは構造に特化してシンプルで扱いやすいフォーマットとして一般社団法人buildingSMART Japanにより提案されている。詳しくはbuildingSMART Japanのホームページで確認されたい。

ARCHICADとRevitという二つのBIMアプリケーションのST-Bridge対応が最近発表された。

今回は一貫構造計算ソフトSuper Build/SS7(ユニオンシステム株式会社)を使って筆者が作成した次のような3階建てRCモデルを使う。このモデルのST-Bridgeデータをユニオンシステム株式会社に提供していただいた。鉄筋コンクリート造3階建ての小さなモデルだ。

このST-BridgeデータをARCHICADとRevitで読み込んだのでその結果を紹介する。

Super Build/SS7で作成した構造モデル

Super Build/SS7で作成した構造モデル

2 ARCHICADで動作するST-Bridgeコンバーター

ARCHICADで使えるST-BridgeコンバーターはST-Bridge Converter for ARCHICADとして無償で公開されており、ダウンロードすることができる。

GRAPHISOFT:ST-Bridge Converter for ARCHICAD

ARCHICAD 20、20 Soloおよび21、21 Solo用が用意されていている。ST-Bridgeデータをインポート、エクスポートどちらもできるが、ここではインポートの動作を見てみよう。

ST-Bridge Converter for ARCHICADのページ

ST-Bridge Converter for ARCHICADのページ

3 ARCHICADでST-Bridgeデータをインポート

ST-Bridgeデータのファイルの拡張子は「.stb」だ。ARCHICADからは一般のプロジェクトを開く要領で「ファイルを開く」ダイアログボックスで対象となるSTBファイルを指定する。数秒でファイルが開き、「STBファイルのインポートに成功しました」というメッセージが表示される。

ARCHICADで開かれたSTBファイル

ARCHICADで開かれたSTBファイル

4 ARCHICADでのインポート結果を検証

建物の構造要素をインポートしたので何か大事な情報が欠けていると困る。このプロジェクトでは次の設定や部材が変換・生成されたことを確認できた。欠落はない。

  • フロア
  • 通り芯(とおりしん)
  • 梁(はり)
  • 壁開口
  • スラブ

特徴的なのはレイヤーだ。レイヤーは次のように頭文字「STB-」のレイヤーが部材ごとに作られるので扱いやすいプロジェクトとなる。

インポート後のレイヤー構成(一部)

インポート後のレイヤー構成(一部)

必要十分な情報が渡っているので、ここから詳細なモデリングをおこなっていくのに支障となるような問題は特にない。構造計算に必須のコンクリート強度や鉄筋の情報はどうなっているのだろう。それらは各部材にIFCプロパティとして登録されている。

「梁の設定」でIFCプロパティを見る

「梁の設定」でIFCプロパティを見る