2014年 1月 1日公開

実務者のためのCAD読本

【アーカイブ記事】以下の内容は公開日時点のものです。
最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

基準を六自由度から見つける【世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 3rd STEP/第2回】

機械系CAD 講師:山田学

シリーズ記事

2 基準を六自由度から見つける

前回は、寸法を記入する前に組立図を見て基準と機能を探し出し、それらの相関関係を見極めて、ばらつきを最小限にするために、ダイレクトに寸法を記入することが設計意図を表す寸法記入の第一歩であることを理解した。

今回以降、具体的な機械製品を使って基準や機能を探し出しながら、寸法を記入する過程を、部品を変えながら考えてみる。

下記に示す軸を固定する治具(じぐ:作業を補助する器具の総称)の組立図を見ながら、寸法記入の考え方を知ろう。

治具の組立図

このあと説明しやすいように、部品名称を下記のように決めておく。
1…Vブロック
2…ハウジング
3…締め付けボルト
4…ハンドル

まず、構造を確認しよう。
固定される軸を置く基準となるものが、Vブロックである。
軸を固定するために、Vブロックの真上に締め付けボルトがあり、固定する際の反力を受けるためにハウジングをVブロックの溝部に噛み込ませている。
締め付け軸には回転しやすいようにハンドルが挿入されている。

治具とVブロックの3DCG

この構造から機能を分解する前に「六自由度の拘束」を知っておかなければいけない。
六自由度とは、三次元を表すX軸Y軸Z軸における併進特性と回転特性を合わせたものである。

三次元を表すX軸Y軸Z軸

機械部品を設計する場合、六自由度の拘束を確認しながら位置を決める。これは、基準を明確にするための設計テクニックの一つである。
製図の際も、六自由度の拘束を探しながら基準を見つけることになる。

まず、Vブロックの基準を、六自由度方向の拘束を考えながら探してみよう。
一般的な機械部品の場合、取り付け面が基準となり、ねじなどの締結部材で固定されるが、Vブロックには固定部はなく、定盤などの作業台に置くことで基準となる。
従って、取り付け基準面は、VブロックのV面がある平面(上下に2面あり)を利用することになる。

基準面を示したVブロックの平面図

構造上、裏返しても基準面にできることから、下図のように、それぞれの基準面同士を寸法線でダイレクトに指示することで、Vブロックを大量に製作した場合に、個々の高さ寸法のばらつきを最小限(*1)に抑えることができる。

(*1)寸法公差記入の前段階という前提であり、ばらつきを最小限に抑えるには、寸法公差が必要になる。

Vブロックの平面図

置くだけという機能を持つ取り付け基準面であるため、六自由度の拘束を気にする必要はないが、六自由度を学習する意味で、この取り付け基準面の六自由度を考えてみよう。

Vブロックは作業台の上に置くことで面として接触するため、Z軸の併進運動ZA、X軸の回転運動XB、Y軸の回転運動YBの動きが拘束される。
しかし、Z軸方向の回転運動ZB、X軸方向の併進運動XA、Y軸方向の併進運動YAの動きは拘束されないため、Vブロックは作業台の上で自由にスライドして作業させるという設計意図が分かる。

作業台におかれた治具のイメージ