2015年 1月 1日公開

実務者のためのCAD読本

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面の肌記号の記入上の注意点と使い方【世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 4th STEP/第3回】

機械系CAD 講師:山田学

シリーズ記事

3 面の肌記号の記入上の注意点と使い方

前回は、はめあい構造に使用する公差域クラスの記号の意味と記入法を紹介した。
今回は、機械加工によって生じる凹凸や筋目を表面粗さの「面の肌記号」として、図面に表すテクニックについて解説する。
鉄鋼やアルミ・銅などの金属材料を旋盤やフライス盤、研削盤などで機械加工する際に、素材表面に工具刃の痕が残る(画像1、3、5、6)。

画像1

旋盤のバイト刃先の痕

旋盤のバイト(画像2)刃先の痕

画像2

バイト

バイト

画像3

正面フライスカッターの刃先の痕

正面フライスカッター(画像4)の刃先の痕

画像4

正面フライスカッター

正面フライスカッター
(フルバックカッター、またはフェイスミルとも言う)

画像5

エンドミル底刃の痕

エンドミル(画像7)底刃の痕

画像6

エンドミル側面刃の痕

エンドミル(画像7)側面刃の痕

画像7

エンドミル

エンドミル

では、表面粗さの記号を解説する前に、触針式による表面粗さの計測方法に触れてから、表面粗さの話に入ろう。
触針式計測器では、分解能がμm(マイクロメートル)オーダーであり、触針の上下動作量を解析する構造になっている。測定手順は次のとおりである。

  1. 計測前に、工作物表面の工具痕の方向を確認する(画像8)。
  2. 表面粗さ測定器の触針が、工具痕に対して垂直方向になるように走査させる(画像9)。
    (最も悪いデータが出る条件を探して計測する)

画像8

計測前に、工作物表面の工具痕の方向を確認

触針式計測器

画像9

測定器の触針が、工具痕に対して垂直方向なっている画像

測定器の触針が、工具痕に対して垂直方向に走査

図面に記載される寸法数値と表面粗さの数値には設計意図として決定的な違いがある。

【図面に記載される寸法数値】

寸法数値は、加工の目標値であり、計測の際も記載された寸法に対して普通許容差の範囲内になければ、部品不良と判断される。

【図面に記載される表面粗さの数値】

表面粗さの数値は粗さの限界値であり、計測の際に粗さの数値を超えない限り部品不良とは判断されない。

従って、加工者側の意識として、図面に記載された表面粗さの数値に対して、かなりきれいな表面になるように仕上げる傾向がある。

一般的に、特に理由がない場合、表面粗さは「算術平均粗さ:Ra」を用いる。
しかし、真空装置や高圧製品のような漏れが許されないシール部の表面粗さは「最大高さ:Rz」を用いることが一般的である。

【面の肌記号】

表面粗さは、面の肌記号として、投影図の形状線あるいは寸法補助線上に指示する。
面の肌記号は、新旧合わせて3種類が存在し、今でも古い記号を使用している企業も多い。
新旧の面の肌記号の対比表を下記に示す。

【新旧の面の肌記号の対比表】

  1992年以前の記号 2002年以前の記号
(代表数値例)
2002年以降の記号
(代表数値例)
加工の有無や方法を問わない (なみと呼ぶ) (上限の数値を記入) (上限の数値を記入)
機械加工を要求
(粗い仕上げ)
(いっぱつ)
機械加工を要求
(経済的で良好な仕上げ)
(にはつ)
機械加工を要求
(きれいな仕上げ)
(さんぱつ)
機械加工を要求
(大変きれいな仕上げ)
(よんぱつ)

加工現場などのベテランエンジニアから、表面粗さを「50エス(S)」、「100エス(S)」という言葉で聞くことがある。
ここでのエスという意味は、最大高さと同義と考えてよい。
表面粗さの数値は、下表に示すように標準数を使用する。

適用 算術平均粗さ
Ra
最大高さ
Rz
超精密仕上げ面 0.025 0.1
0.05 0.2
非常に精密な仕上げ面 0.1 0.3
精密仕上げ面 0.2 0.8
部品の機能上滑らかさを重要とする面 0.4 1.6
集中荷重を受ける面
軽荷重で連続的でない軸受面
0.8 3.2
良好な機械仕上げ面 1.6 6.3
中級の機械仕上げ面 3.2 12.5
極めて経済的な機械仕上げ面 6.3 25
重要でない仕上げ面 12.5 50
寸法的に差し支えない荒仕上げ面 25 100

しかし、標準数の数値はたくさんあるため、どれを選んでよいのか悩むことになる。
おおよその目安であるが、自社の図面を参考にしながら、下記のように決めてもよい。

  • 他の部品と接触しない面(寸法公差の指示もない)
    例: Ra25 Ra12.5
  • 取り付け面など他の部品と接触する面、あるいは他の部品と接触しなくても寸法公差の必要がある面
    例: Ra6.3 Ra3.2
  • 位置決めなど他の部品とはめあい、あるいは摺動する面(公差域クラスの公差など)
    例: Ra1.6
  • 研磨面(寸法公差の有無にかかわらない)
    例: Ra0.8 Ra0.4  あるいはそれ以下の数値