2019年 8月

実務者のためのCAD読本

プレゼンテーションとつなぐ【BIMでつなぐ/第1回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

設計したモノをどう見せるかは悩ましい。とにかく簡単にかつリアルに建築物を見てもらいたい。歩きまわる視点や、その質感や空気の流れも、温度も感じてもらいたい。今回よりはじまる連載新シリーズ第1回では、それらを可能にする「BIMとつなぐプレゼンテーション」について最新の情報をお届けします。

この連載について

今回の連載「BIMでつなぐ/全5回」では、BIMとつなぐ、つなげることで得られる効果やその方法について、最新の情報をお届けします。(変化の激しいBIMテクノロジーに合わせて、テーマを変更させていただく場合もございます。)

シリーズ記事

  • プレゼンテーションとつなぐ【BIMでつなぐ/第1回】
  • 建築確認申請とつなぐ【BIMでつなぐ/第2回】(2019年10月公開予定)
  • プログラミングでつなぐ【BIMでつなぐ/第3回】(2019年12月公開予定)
  • 点群測量とつなぐ【BIMでつなぐ/第4回】(2020年 2月公開予定)
  • 図面とつなぐ【BIMでつなぐ/第5回】(2020年 4月公開予定)

1.ゲームになったBIM?

2019年5月14日「Epic Games社がTwinmotionを買収、2019年11月までTwinmotionは無償提供」というニュースが飛び込んできた。Epic Games社は米国のゲームメーカー、TwinmotionはBIMから動画やVRを作成するアプリケーションだ。Epic Games社はゲームの分野で評価の高いUnreal Engineを開発した。Unreal Engine はTwinmotionにも採用されている。筆者もiPadでEpic Games社のゲームFortniteで親戚の小学生と対戦を楽しんだことがある。

TwinmotionはARCHICADやRevitとつながるビジュアライゼーション アプリケーションとして以前から知られていた。この30万円近い製品を11月までとはいえ無料でダウンロードできるというのだから驚きだ。Twinmotionをどう使うのか、そのコツを筆者の知る限り紹介したい。

Twinmotionは2019年11月まで下記からダウンロードしてインストールできる。

Epic Games社のゲームFortniteの1シーン(町や草原を動き回り戦い、橋を作ったりもする)

(C) 2019, Epic Games, Inc. Epic、Epic Games、Epic Gamesロゴ、Fortnite、Fortniteロゴ、Unreal、Unreal Engine 4およびUE4は、米国およびその他の国々におけるEpic Games, Inc.の商標または登録商標であり、無断で複製、転用、転載、使用することはできません。

2.ARCHICAD、Revitからリンク

今回のテーマは「BIMでつなぐ」だ。Twinmotion Direct LinkプラグインとしてARCHICAD用とRevit用が用意されているので、このプラグインをあらかじめインストールしておく。

どちらの場合もEpic Games Launcherを使って、Twinmotionをあらかじめ起動しておく。

まずARCHICADからTwinmotionにつないでみよう。ARCHICADに追加された「Twinmotion」メニューから「DirectLink」を選択する。操作はそれだけだ。

ARCHICAD 22で表示。モデルは『ARCHICAD 22ではじめるBIM設計入門』(エクスナレッジ社)から

30秒ほど待てば、Twinmotionにモデルが表示される。

ARCHICAD → Twinmotionで表示

Revitでも同じようにTwinmotion Direct Linkプラグインのインストールで図のように「Twinmotion」タブが表示されているので「Twinmotionで見る」ボタンをクリックする。わずか1クリックだ。

Revit 2019で表示。モデルは『はじめてのAutodesk Revit & Revit LT』(エクスナレッジ社)から

3秒ほどで図のようなモデルがTwinmotionに表示される。とにかく早い。

REVIT → Twinmotionで表示

3.特定の街区に建てる

ARCHICADやRevitで作られたモデルをTwinmotionにリンクすると、後はTwinmotionの世界での操作になる。Revitからつないだ共同住宅を例に、ここからの作業を進めることにしよう。

まず建設地だ。もちろん架空だが、筆者の事務所のある西宮市の中心部に建てることにする。「周辺環境」で地図を表示して「西宮」と漢字で検索、範囲を指定して「取得」すると画面上に都市の一画が表示される。ビルの高さが一定になっているので、一棟ずつ調整する。道路を選択すると「国道2号」と正しく表示される、実在する街区だ。

ビルを街区に位置合わせするには、ビルではなく読み込んだ街区(TwinmotionでContextと表示される)を移動、回転する。

「周辺環境」で街区を詠み込み、周囲のビル高さを調整

4.道路と車、人、植栽、天候

楽しいのは道路と車、人だ。「パス作成」で数点をクリックすると道路が作成される。車線数を2、対面通行ON、逆行(左側通行)ONで車が走る国道2号線ができあがる。下の図では分からないが、車は動いている。車の密度と速度も変更できる。

道路を「自動車パス」で配置

植栽を配置した。植栽の種類は多くないが、それらしいものはそろっている。樹木を一本ずつ配置してその大きさを変えることもできるし、「ペイント」を使って直径と密度を指定して、地面を塗り潰すように配置することもできる。風で葉が揺れる様子もオン/オフ可能だ。

人物はグループでも一人でも配置でき、「話す」「立つ」「座る」「寝る」「踊る」などの姿勢を設定できる。歩く人物の場合は車と同じように「人物パス」を使う。人物のタイプもおおまかな人種ゾーンではあるが設定できる。人の密度や衣類も設定できるので、ビジネス街かリゾート地なのか、その雰囲気を演出できる。人は歩き、話し、踊り、自然な行動をとるシーンをあっという間に演出できる。

自動車、動物(ペット)も適当なものをおいてみた。植栽やペットなど置くモノを決めて画面上で置きたい位置をクリック、その種類や動きを設定という簡単な操作だ。

地域設定で太陽光を設定して日本の7月、明るい雰囲気を演出してみた。ここまで1時間もかからない、時間を忘れる楽しい操作だ。できあがったシーンもゲームの中のシーンそのもので、歩き回るのが楽しい。

植栽、人物、ペット、自転車、車を配置して地域と季節を設定

「天候」も設定してよう。雪を演出してみる。下の図は静止画だが、Twinmotion上ではもちろん動画として雪の降る様子を見せることができる。

天候を降雪に設定したシーン

5.マテリアルを変更

壁のマテリアルを変更したくなった。また壁面の窓も少し単調な気がする。窓のほうはRevitで窓のコピーと移動でモデルを変更する。変更したらRevitで「Twinmotionで見る」ボタンを押せば一瞬でTwinmotion内の建物の窓が変更される。

Revitで窓の数と位置を変更

TwinmotionでRevitと同期、窓が変わった

壁をレンガのマテリアルに変えたい。マテリアルの変更はTwinmotion上で簡単にできる。20種類以上あるレンガから適当なものを選んで、壁にドラッグ&ドロップするだけだ。大きさや色合いも変更できる。

壁面をレンガに変更

6.4種類の出力

出力は静止画、パノラマ、動画、BIMmotionの4種類がサポートされている。BIMmotionはTwinmotionのインストールされていないコンピューターで、作成した3Dモデルを表示する仕組みだ。Twinmotion内の表示と全く同じように回転、ズーム、オービットができる。ウォークスルーで仮想現実内を歩き回れる。BIMmotionの出力には数分かかるが、指定したフォルダーに実行用のファイル一式ができあがる。

ヘッドマウントディスプレイがあれば、Twinmotion内でも、BIMmotionでもVRを実現できる。ただし、コンピューターには高性能のディスプレイカードなどそれなりの能力が必要だそうだ。

歩き回る動画の作り方も簡単だ。図のようなキーフレームをカメラのシャッターを押す感じで撮っていくと、複数の場面で構成された一つのクリップができる。画面と画面は自動的に適当なスピードでつないで動画にしてくれる。できたいくつかのクリップを指定すると、全体をつないだ動画ができあがる。動画の中で季節の変化や、画角の変更も可能だ。動画はMP4形式のファイルにエクスポートされる。20秒ほどの動画だが筆者の環境で30分ほどかかった。

シーンを自動的につないで動画作成

7.BIMとプレゼンテーションをつなぐ

ざっとBIMアプリケーションからTwinmotionにつないで、動画を作成するまでを解説した。車はカタログだけで買わないのに、家は図面だけで買うのですか? BIMを説明するときによく言われるたとえ話だ。 では図面じゃなく何で建築を体験するのか。クライアントにとってはTwinmotionのようなアプリケーションがその役割を担う。

設計者にとっても、自分の設計をすぐVRで見まわして確認したいときに使えるツールになるだろう。あ、そのためにはヘッドマウント ディスプレイを買わなくては。

関連記事