ビジネスお役立ち情報 > 実務者のためのCAD読本 > 「おさまり」のいい図面【4】「段」 階段を考える

実務者のためのCAD読本実務者のためのCAD読本

実務者のためのCAD読本のトップへ

「おさまり」のいい図面  〜鍵はBIM×二次元CADの相互理解〜第4回:「段」 階段を考える /全5回「おさまり」のいい図面【4】「段」 階段を考える

1.階段といえば1.階段といえば

階段といえばやはり1997年に建築された原広司設計の京都駅ビルだろう。
駅の改札を抜け左へエスカレータで上がるとそこに大階段がある。上の階への通路としてだけでなく、客席やベンチとしても使われている。階段は登り降りのための通路だけではないことがここに来るとよく分かる。

京都駅ビルの大階段

この京都駅ビルで階段はモニュメントでもある。鋼製階段が建物から突き出して空中に浮かび、駅のホームに立つ人々から「あれ、何だろう?」と視線を奪う。さらに建築として大事なのはその鋼製階段が美しいことだ。階段の美しさの秘密も後段で考えてみよう。

京都駅ビルの建物から突き出した階段

2.名称が大事2.名称が大事

「ササラは200のチャンネルで、フミヅラは240でどうでしょう?」と打ち合わせで聞いて、「すみません図面にしてください」と答えていたのでは仕事が進まない。
建築用語を正確にマスターしておかないと異国の人との会話になってしまう。

●「ササラ桁(ささらけた)」正しくは「側桁(がわけた)」と呼ぶが、階段の一段一段を支える両側の板だ。
●「踏板(ふみいた)」足が踏む板、ステップのこと、段板ともいう。
● 「蹴込み板(けこみいた)」つま先側に立つ板のこと、必ず設けるとは限らない。
● 「段鼻(だんばな)」踏板の角、ノンスリップと呼ばれる滑り止めはここに付ける。
● 「踏面(ふみづら)」「蹴上げ(けあげ)」法律上の用語にもなっている階段の基本となる寸法。図を参照。
● 「蹴込み(けこみ)」踏板の奥行き−踏面=蹴込みという式で表される、段鼻より奥に入り込んだ踏板部分の寸法。

階段各部の名称

余談だが「蹴上げ(けあげ)」は英語で「RISE(ライズ)」という。ある建築の翻訳文で「屋根の蹴上げ」という一節があって、何かと思ったが原文は「roof rise」で屋根の棟の部分の軒からの高さのことだった。もちろん誤訳だが、英語ではどちらも「RISE(ライズ)」だから起きた間違いだ。

3.サイズと法律3.サイズと法律

階段の途中で「蹴上げ」寸法が変わっていたら、間違いなく人はつまずく。小学校の階段が急勾配だったら子どもたちは地震のときに避難できない。けが人が出る。
階段の寸法はそれほど大事なので法律でその最低寸法が決められている。
建築基準法施行令23条の規定によれば、階段の寸法は次の表のようになる。

建築基準法施行令23条による階段の寸法

この表の5にある住宅の階段の最低寸法、蹴上げ230、踏面150で階段を作図して、約25cmの足を描いてみるとこんなに急勾配になる。法律は最低基準というが、これは危ない階段だ。

最低寸法で作図した住宅の階段

階段の理想的な寸法の計算を助けてくれるツールも一部のCADアプリケーションに備えられている。図はRevitの例だ。使いやすい階段を表現するという次の式で蹴上の最大高さを逆算する。
蹴上げ×2 + 踏面 = 610〜650

階段の理想的な寸法計算ツール

階段には手すりが付きものだが、手すりの設計には注意が必要だ。手すりに子どもが足をかけて転落することのないよう、子どもが利用する可能性のある手すりでは配慮が必要だ。たとえば「神戸市建築主事取扱要領」では図のように寸法とその測定位置が細かく決められている。

「神戸市建築主事取扱要領」より

子どもが利用する可能性のある建物で、筆者は「子どもの足がかりとなるベランダ手すりは危険」との指摘を確認機関からしていただき、図のように変更を求められた。考えればもっともなことで設計者として恥ずかしい限りだ。

手すり変更前(上)、手すり変更後(下)

4.美しい鋼製階段4.美しい鋼製階段

次の図の左側が美しくない階段で、右が美しい階段だ。違いが分かるだろうか?

美しくない階段美しい階段

汚れているかどうかという話ではない。ササラ桁の形状に注目しよう。図面で表現すると次のようになる。

美しくない階段美しい階段

階段の段鼻をつないだ線が同じ位置から折り返しているのが「美しい階段」だ。同じ位置から折り返しているので、ササラ桁を急に切り落とす必要もない。ササラ桁のおさまりがなめらかにデザインされる。このようにしておけば、手すりも上り下りともに水平部分の長さを同じにできて、なめらかにおさめることができる。

なめらかにおさまった手すり

5.図面の表現とルール5.図面の表現とルール

JIS A 0150:1999『建築製図通則』で平面図での階段の表現が決められている。あまり細かいことは決められていない建築製図のJISだが、階段についてはけっこう細かいところまで決まっている。その一部を抜粋する。

方向を示す矢印は、階段の中心線上に細い実線を用いて、最下部の段鼻線を示す白丸と、最上部の段鼻線示す矢印によって描く。
ひと続きの階段の切断は、ジグザグ付きの斜めの細い実線によって表示する。誤解されない場合には、ジグザグを省略することができる。
必要な場合には、踊り場の高さを数値で表示することができ、各段には、最下段を”1”として上り方向に番号を付ける。

階段平面図としては図のように階段を作図する。方向を示す矢印、◯の位置、矢印が最上部の段鼻線にあることがポイントだ。

階段平面図

階段の立面図は慣習として断面図で作図する。踊り場をはさんで手前側、上図Aの位置に断面線を置くので、手前側の階段の踏板は実線で、向こう側の階段のササラ桁は実線、踏板は破線で表現することになる。

階段立面図

6.会社ごとのローカルルール6.Revitで階段

いよいよBIMの登場だ。Revitで上記の鋼製階段をモデリングしよう。使うのはRevit 2013だ。
(1) 目的の階段ファミリをロードして、階段幅900や踏面の寸法240、段数16をセットしておく。

階段プロパティ

(2) 平面上で図の階段の中心線を[1][2][3][4]とクリックする。
(3) 手すり柱の位置などを調整する。
これだけの作業で図の階段ができあがった。
断面図を見ると、ササラ桁が飛び出すことなく「美しい階段」になっている。Revitでの階段作成はずいぶんと改良され、マニュアル無しで直感的な操作で作成できるようになった。
ほとんど調整しないでここまでの階段はできるが、さらに施工用、製作用にこのモデルを使うのはまだ無理だ。細かく手すりの位置やおさまり、取り付け方法なども表現したいが、それには手間がかかる。

平面図断面図
3Dモデリング
企業のITセキュリティ講座
企業のITセキュリティ講座