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建築系CAD 講師:鈴木裕二

BIMアプリケーションの使いこなし

第4回:IFC を使ってデータ互換(後編)/全5回

BIMアプリケーションの使いこなし【4】IFC を使ってデータ互換(後編)

1ArchiCAD意匠モデルをRevitに − トラブル発生!

構造設計の仕事でArchiCADのモデルをRevitに持ってくることがある。
先日、たまたま客先のコンピュータでそのArchiCAD → Revitの作業をする必要があった。
ArchiCADでIFCファイルに書き出して、Revitでそのファイルを開く。平面はきちんと表示されるが、立面、3Dには何も見えない。表示の設定をいろいろ変えてみたが、全くダメだ。ArchiCADで見えるものがRevitでは見えないので仕事は進まない。

ArchiCAD で作成したテストモデル

ArchiCAD で作成したテストモデル

↓ Revit で正しく表示されない

Revit で正しく表示されない

原因を探るために壁、床、窓、ドア、ゾーンだけの単純なテストモデルを作成して、IFCファイルに書き出し、Revitで表示させてみた。このテストモデルでも平面のみの表示になってしまう。
まずIFCファイルへの書き出し方法や設定に問題があり正しくIFCファイルができていないのかもしれないと考えた。前回に紹介したIFCモデルビューアSolibri Model Viewer (http://www.solibri.com/solibri-model-viewer.html)の出番だ。
IFCモデルビューアSolibri Model Viewerで表示してみると図のように正しく表示される。
さてそうなると問題はRevitのほうにあるということだ。

Solibri Model ViewerでIFCファイルを表示

Solibri Model ViewerでIFCファイルを表示

2テンプレートに問題があった

コンピュータにからむトラブルはじっくり腰をすえてその原因を探らないといけない。IFCには問題がない、Revitでも以前は正しく表示されていた。Revitで何かが変わったはずだ。1日あれこれ試してみて、やっと解決策が見つかった。最初のテンプレート設定がまずかったのだ。いつのまにか初期設定テンプレートが「建設テンプレート」になっていたのだ。IFCファイルを開くときの初期設定テンプレートは「建設」ではなく、「建築テンプレート」を使わないといけない。
IFCファイルを開くときの初期設定図面はIFCオプションの「IFCオプションを読み込み」ダイアログボックスの「IFC読み込みの既定のテンプレート」で設定できる。
テンプレートを変更して、ちゃんとRevitでもIFCファイルが正しく表示できた。ほっとひと安心だ。

「IFCオプションを読み込み」ダイアログボックス

「IFCオプションを読み込み」ダイアログボックス

テンプレートによってどの表示が可能かを表にまとめた。参考にされたい。

テンプレート(ファイル名) 平面図 立面図 3D
構造テンプレート
(Structural Analysis-defaultJPNJPN.rte)
建築テンプレート
(DefaultJPNJPN.rte)
建設テンプレート
(Construction-DefaultJPNJPN.rte)
× ×
機械テンプレート
(Mechanical-DefaultJPNJPN.rte)

△は一部のみ表示

Revitで正しく3D表示されたテストモデル

Revitで正しく3D表示されたテストモデル

3ArchiCADとRevitのオブジェクト

テスト用に作成したシンプルモデルを使って、ArchiCADの各要素がRevitでどう解釈されたかを見てみよう。

ArchiCAD Revit
種類 ID ファミリ タイプ/名称
W3 標準壁 (文字化け)
スラブ S1 S1
ドア SD3 ドア SD3 958
AW6 AW6 757
ゾーン Z1 部屋部屋 (文字化け)

いくつかの文字化けは愛嬌として、ArchiCADの「ゾーン」という物理的なモノではない空間を示す要素がRevitの「部屋」としてそのプロパティを含めて正しく渡されている。
ArchiCADで算出した面積や容積は、そのままRevitにも引き継がれる。あたりまえといえばあたりまえなのだが、もう少しIFCはいい加減なものかと思っていた筆者には驚きでもある。

Revitで表示されたゾーン=部屋のプロパティ

Revitで表示されたゾーン=部屋のプロパティ

4ArchiCADガイドラインモデルを渡す

この連載で何度も取り上げているArchiCAD BIM ガイドライン(http://www.graphisoft.co.jp/download/BIMguideline/)のモデルを取り上げよう。このモデルをArchiCADからRevitにIFC経由で渡してみる。
これだけ複雑なモデルで情報もぎっしり入ったモデルだ、果たしてどうなるだろうか?
できあがったIFCファイルは15.3MBで、そんなに大きいとも思えないのだが、Revitへの読み込みには20分近くかかってしまった。IFCビューアがほぼ瞬時でモデルを表示するのに比べると、20分はかかりすぎだ。

ArchiCAD ガイドラインのモデル

ArchiCAD ガイドラインのモデル

Revit に渡されたモデル

Revit に渡されたモデル

5ソリッド編集の壁がおかしい

おおむねモデルは正しく渡されたようだが、大きなところでは道路斜線のために斜めに切り取られた壁の一部が、Revitで切り取られずに長方形の壁になってしまっている。これでは道路斜線に反した違法建築だ。
ただすべての斜めに切り落とされた壁が長方形になっているのでなく、正しく斜めに切り取られている壁もある。
この壁はArchiCADで、ソリッド編集という機能を使って切り取られている。ソリッドを対象にブール演算の減算によって差をとる機能だ。ほかの壁も同じ方法で斜めに切り取られている。なぜこの壁だけが、という疑問は解決できないままであるが、IFC経由でモデルを渡すとこういうこともあるということだろう。
ほかにも梁としてモデリングした手すりが消えてしまっているなど、少し問題が見つかったがおおむね各要素は正しく渡されているといっていいだろう。

Revitで長方形になってしまった壁

Revitで長方形になってしまった壁

ArchiCADでソリッド編集された壁

ArchiCADでソリッド編集された壁

6見えない要素は渡されるか?

BIMで設計するメリットに正確な数量をいつも把握できるということがある。例えばこのガイドラインでは外壁に比較的高価なガルバニウム鋼板が使われている。このガルバニウム鋼板の使用量を意識しながら作業するというのは、コストを意識した設計という意味で大事な要素だ。
壁を構成する複数の材料という情報はIFCファイル経由で渡すことができるのだろうか?
まずArchiCADでの壁の構成の表現だが、「複合構造」という機能を使って多種の材質の重なった壁を設定している。例えばこのガイドラインモデルの上部外壁は「004a-ガルバ角波+断熱+S+断熱+ガルバ小波」という複合構造で設定されている。その内容は次の図のように細かく設定することができる。この複合構造を壁に設定、配置するだけだ。

ArchiCADでの複合構造の設定

ArchiCADでの複合構造の設定

IFCファイルに書き出してもこの情報は維持される。IFCモデルビューアSolibri Model Viewerで表示、壁を選択してその情報を表示「Material」のタブを選択すると、図のようにこの壁の層の構成が表示される。情報は何も失われていない。

Solibri Model Viewerで壁のマテリアル情報を表示

Solibri Model Viewerで壁のマテリアル情報を表示

ところがRevitにIFCファイルを持って行くと、この情報は失われてしまうのだ。図のように壁のタイププロパティを表示させるとほとんどの項目が白紙状態だ。これでは困る。「ゾーン」は「部屋」として、そのプロパティが正しく渡されるとこの記事の冒頭で書いたが、壁の情報がこのレベルでは困る。何としても改善を求めたいところである。

Revitで壁の情報を表示

Revitで壁の情報を表示

7仕事で使うIFC

2D CADの世界では、例えばJw_cadとAutoCADとの間でDXF形式のファイルによるデータ渡しを行うときに、寸法が消える、ハッチングや注記が化けてしまうという問題が多発した。そのためデータを渡すときには「紙の図面を正とする。
データは参考として用いること」と注記した。
BIMならどうなるのか? 紙の図面はまだない段階でデータをIFCファイルで渡すことが多いだろう。仮に紙の図面があったとしても、BIMデータ中のモデルには紙の図面に表現されていない部分も既に作りこまれている。そのようなモデルを「正として」扱えるのだろうか?
データを渡す側も受け取る側も同じBIMアプリケーションを使っていれば、問題はないが、今回検証したようにArchiCADとRevitのようにちがうアプリケーションを使っていれば、IFC経由で同じモデルが再現される保証はない。かといって高価なBIMアプリケーションを何本も購入するのは難しい。
やるとすればデータを渡す側がSolibri Model Viewerのような中立で無償のIFCファイルビューアで形状を確認しておいて、「モデル形状はSolibri Model Viewerで確認した。形状に疑問があるときはSolibri Model Viewerで確認すること」と契約書などに記載しておくのがいいかもしれない。

「BIM アプリケーションの使いこなし」をテーマとしたこの連載も次回で最終回になる。次回は2次元CADの代表選手AutoCADとの連携、BIM上で実行できる解析など盛りだくさんな記事を予定している。

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