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1 2D CADはもういらない?
BIMが設計の前段階、つまり企画設計や基本設計の段階で使われるのは当たり前になってきた。一方、施工という設計-建設プロセスの最後に近い段階でどこまでBIMが使えるのかが話題になっている。
そんな中で昨年登場したArchiCAD 17では「2D CADはもういらない」という過激なキャッチとともに、躯体図モデルも作成できると謳(うた)っている。さて、躯体図モデルはどこまでできるのか、2D CADはもういらないのか、詳しく見てみよう。
2 見上げるか見下げるか
コンクリート構造の建物はある階の柱、壁と、その上の階の床と梁を一区切りとしてコンクリートを打設する。例えば、2階の柱、壁と3階の床、梁の型枠を一度に組み立て、この範囲のコンクリートを打設する。
そのため、施工用の図面はこの2階の柱、壁と3階の床、梁が1枚の紙に表現されていると扱いやすい。このような図面を「見上げ図」と呼ぶ。実際に上を見上げて作図した天空図ではない。2階の床に鏡を置いて3階の床、梁を映したものを上から見下げた図面だ。それでも習慣で「見上げ図」と呼ぶ。これに対して2階の柱と2階の床、梁を1枚に作図した下向きの「伏図」は「見下げ図」と呼ぶ。
現在の階の柱と上の階の床、梁を作図した「見上げ図」
コンクリート躯体の施工図では「見上げ図」を使うが、最下階だけは例外で「見下げ図」を使い基礎梁と最下階の柱を1枚の図面で表現する。見上げ図では上階の梁を下から見た表現を使うので、梁は実線で表現することが多い。施工会社の多くはコンクリート構造の床伏図を見上げ図で作成する。
また、ゼネコンでは設計図は見下げ図で、施工図は見上げ図とルールを決めている会社もある。設計事務所が作成する構造図や一貫構造計算プログラムの出力では見下げ図が基本だ。
余談だがRevit 2014で「構造テンプレート」から作業すると2階レベルが初期設定される。ここで床を作成すると2階の床、柱を作成すると1階の柱となる。構造テンプレートには「見上げ図」という日本式の施工図ルールが設定されている。
3 見上げ図をArchiCADで設定
設計図としての構造図、その中の梁床伏図(はりゆかふせず)を最初に取り上げる。施工図に近い梁床伏図として、ArchiCAD 17から使えるようになった見上げ図表現を使う。
ArchiCAD17で見上げ図表現が使えるようになったと聞いて、平面図のビューで見上げか見下げかを切り替えられるようになったと思ったのだが、少し違うようだ。ビューではなく3Dドキュメントを使って見上げ図を実現する。ArchiCADのメニューで[ドキュメント]→[3Dドキュメント]→[3Dドキュメント設定…]を選び、見上げ図の設定を行う。「3Dドキュメントデフォルト設定」で次のように「見上げ図」の柱、壁の切断位置をFLから1100の高さとする設定をしておく。
「3Dドキュメントデフォルト設定」で見上げ図を設定
4 見上げ図の梁床伏図
見上げ図の設定が終われば、[ドキュメント]→[3Dドキュメント]→[新規3Dドキュメント…]で見上げ図を作る。どの階の見上げ図を作成するかは、今開いている平面図がどの階であるのかに依存する。
ここでは4階の見上げ図を作成するので、4階平面図を開いておく。「新規3Dドキュメント」ダイアログボックスでは図のように、名前を分かりやすく「4階柱壁/5階梁床伏図」としておいた。
4階平面図を開いておいて「新規3Dドキュメント」を作成
5 躯体だけを表示した「4階柱壁 5階梁 床伏図(ゆかふせず)」
平面図を見上げに変更したものがプロジェクト一覧の「3Dドキュメント」内にできあがる。平面図の要素を見上げているので、構造図としては少し違う感じだ。次のような調整を行って構造図としての「4階柱壁 5階梁 床伏図」としての表現にする。
- 躯体表示を「モデル全体」から「構造耐力要素の躯体のみ」に切り替える。これで構造用の柱、壁、梁、床のみの表示となる。
- 通り芯(とおりしん)と寸法が3Dドキュメントにした時点で消えてしまっていたので、一般の平面図からコピー&ペーストして表示させる。ちょっとスマートではない方法だが、これが簡単で早い方法だ。
- コンクリート切断面は塗りつぶし表示のほうが分かりやすいので、新機能であるビルディングマテリアルを使って、コンクリートの切断面表示を塗りつぶし表示に変更する。
- 柱、梁、壁の符号も表示させる。これらの符号は各要素の「ID」属性を使う。梁符号の回転、位置も手動で調整する。
できあがった「4階柱壁 5階梁 床伏図(ゆかふせず)」