2014年 5月 1日公開

実務者のためのCAD読本

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加工方法を図面に表す【世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術 3rd STEP/第4回】

機械系CAD 講師:山田学

シリーズ記事

4 加工方法を図面に表す

前回までに、設計機能を考えながらVブロックとハウジングの寸法記入を行った。今回は、その他の構成部品である締め付けボルト(画像3)とハンドル(画像4)の寸法記入を考えてみよう。

あらためて、軸を固定する治具(じぐ)の組立図を確認しておく(画像1、2)。

画像1

軸を固定する治具の組立図

画像2

治具とVブロック

1…Vブロック
2…ハウジング
3…締め付けボルト
4…ハンドル

画像3

締め付けボルト

締め付けボルト

画像4

ハンドル

ハンドル

組立図から、締め付けボルトはハウジングとねじで組み合わさっている。 従って、締め付けボルトはねじで回転するため、回転運動ZBは機能的にフリーとなるような構造である(画像5)。
また、1カ所だけであるが、一定の長さでねじ部がかみ合わさっていることから、締め付けボルトを回さない限り動かない状態である。そのため、X軸方向の併進運動XAと回転運動XB、Y軸方向の併進運動YAと回転運動YB、Z軸方向の回転運動ZAが拘束されていると見なす(画像6)。

画像5

回転運動ZBは機能的にフリーとなる構造

画像6

併進運動XAと回転運動XB、併進運動YAと回転運動YB、回転運動ZAが拘束されている

ここで、固定されるべき軸がない状態で締め付けボルトをVブロックに接するまで締め込むと下図(画像7)の状態となり、ねじの有効長さはノブの根元までなくても問題ないことが分かる。

画像7

固定軸がない状態で締め付けボルトをVブロックまで締め込む

それでは、締め付けボルトの投影図から考えよう。
前回までのVブロックやハウジングと異なり、軸物であるためハンドル挿入部の穴を除いて、ほとんどが旋盤で加工される。そのため、投影図は中心軸を水平に置き、加工量の多い方を右側に向けることがマナーである。
図面を描く際に、下図(画像8)のような加工工程を少しイメージできると、適格な図面が描けるはずである。

画像8

加工工程をイメージして図面を描く

次に、軸を押さえつける部分である先端部の直径と長さ、端部(たんぶ)の面取りを記入する。
この部品は比較的細長い部品であるため、旋盤加工時にセンター穴(画像9)を開けて、旋盤の芯(しん)押しセンターによって右端面を補助する可能性を否定できない。
しかし、センター穴を残したままで軸を固定すると、穴の端部のエッジによって相手軸の表面に傷をつける恐れがある。そこで、「センター穴を残してはいけない」という意味の記号を軸の端面に指示しておく(画像10)。

画像9

センター穴について

画像10

「センター穴を残してはいけない」という記号を軸の端面に指示

図面上でセンター穴を残してはいけないと指示しても、加工上はセンター穴がないと加工が難しくなる場合がある。このとき、加工者は図面で指示された全長よりも少し長めに材料を加工して、そこにセンター穴を設け、部品完成間際にセンター穴部を切り落として対応するのである(画像11)。

画像11

最終的に切断して、部品を図面通りの形状に仕上げる

次に、ねじの種類とサイズ、ねじの有効長さ、角部の面取りを合わせて寸法記入する(画像12)。

画像12

ねじの種類、サイズ、有効長さを寸法記入

次に、大径部の面取りと穴の寸法を記入する(画像13)。穴はハンドルを挿入して回転力を与えるだけの機能であるため、特に左右方向の位置はそれほど重要ではない。穴位置は投影図の上下方向では中心線上にあり、左右方向では幅22mmの中央に配置しているとして、寸法は省略している。
また、ハンドルによって大きなねじり荷重を受けるかもしれないため、応力緩和のために小径部との段差部にR2と大きめの隅Rをつけている。

  • * 「φ10」という基準寸法は、ハンドルの外形寸法と同一となるため、設計意図として、組立時の隙間(すきま)を保証するための寸法公差が両部品に必要である。

画像13

組立時の隙間を保証するための寸法公差が締め付けボルト、ハンドル両部品に必要