2018年 9月

実務者のためのCAD読本

第5回 モデリング手法~ フィーチャー間の親子関係を理解する/全5回

監修:山田学 執筆:草野多恵

設計を行うための便利なツールとして昨今では、3D CADが広く普及してきた。CADはあくまで設計を支援するためのツールだが、3D CADを設計に取り入れることにより、効率よく、高品質な設計をより短時間で行うことが可能になっている。そこでこの連載では、3D CADの特長、仕組みなどを理解し、効率的に設計ができる理由を解説する。

はじめに

この第5回では、第3回で解説したフィーチャーの履歴のメリットとして更新が楽で確実であるという話を踏まえ、なぜ楽で確実なのかについて具体的に解説する。

  • 第1回 モデリング手法 ~ 「フィーチャーベース」と「ダイレクト」を理解する
  • 第2回 モデリング手法 ~ 「ソリッド」と「サーフェス」を理解する
  • 第3回 モデリング手法 ~ 「フィーチャーの履歴」を理解する
  • 第4回 モデリング手法 ~ 「パラメトリック」を理解する
  • 第5回 モデリング手法 ~ フィーチャー間の親子関係を理解する

フィーチャーベース モデリングの基本的な作業手順は、最初にまずこれから作るパーツ形状の大まかな基本形状を作成し、それに対してカットを追加したり、突起を付けたり、角にRを付けたりなどして仕上げていくといったものである。

二つ目以降の形状を作成する際にはほとんどの場合、既存形状に対して追加していくことになる。そこで発生するのが「親子関係」というものである。フィーチャーベース モデリングでは、この親子関係を理解していないと、モデルに問題が起こったときに解決することが困難となるため、この考え方をマスターすることが重要となる。

具体的な例から解説

では以下に、具体的な例を示しながら解説していく。このパーツは以下の手順で作成している。

(1) 土台となっている四角形の立体部分を作成

(2) (1)の上面を基準として円筒を作成

(3) 円筒の根元のエッジにフィレット(角 R)を追加

(4) 土台形状の四隅のエッジにフィレット(角 R)を追加

つまり、以下のような親と子の関係になっている。

親:(1) の土台のフィーチャー

子:(2) の円筒フィーチャー

親:(3) の円筒フィーチャー

子:(4) のフィレット

親:(1) の土台のフィーチャー

子:(5) 四隅のフィレット

土台の高さを変更する

土台のフィーチャーは現在高さ30mmである。この高さを50mmに変更してみる。

図-1 土台の高さを50mmに変更した状態

図-2 土台の高さを50mmに変更した状態の図面

土台のフィーチャーの高さが変わると、上に乗っている円筒形状のフィーチャーは土台の形状に埋まってしまうのではなく、30mmと50mmの差分である20mm上に移動しているのが分かる。これは、円筒形状が土台形状の上面を基準として作成されているからである。つまり親であるフィーチャー上の基準としている面が移動するとそれに応じて更新される。これが親子関係のメリットを表す端的な例である。

次に円筒の位置を移動する

次に円筒の位置を移動してみる。(図-3)

図-3 円筒の位置を移動した状態

円筒の根元に付いているフィレットも一緒に移動しているのが分かる。これは、フィレットを円筒のエッジを利用して作成しているので、そのエッジ、つまり親が移動したことでフィレットもおのずと引きずられて移動した結果である。

これは単純なサンプルなので1カ所の変更によって影響が出る別の形状は一目瞭然だが、これが作り込んだ複雑なモデルだった場合、影響が出る部分を特定するのは非常に困難な作業となる。しかしこのような機能であれば、自動で更新されるので設計変更が簡単かつ正確に行えるようになる。

このように、フィーチャーベース モデリングは既存形状のどこかを基準にして追加形状を積み重ねて作成していく仕組みになっており、作成時に参照したフィーチャーとの間には必ず親子関係が発生する。従って、モデリングの際には関連させてよいのかどうかを意識し、意味のない親子関係を付けないように注意しながらモデリングすることで、より効率の良い設計を行うことが可能となる。

例えば以下(図-4)は極端な例ではあるが、右側の四角いスケッチの配置位置を決めるための寸法を、既存の四角いカット形状から取っている。これは設計の条件としてカット形状との位置関係が必要であれば正しい寸法記入だが、このカット形状とは何ら関係ない場合はこのように寸法を採るべきではない。スケッチ環境でも、寸法の基準として使用した場合は相手のフィーチャーとの間に親子関係が発生する。

もし、この基準を取った左側のカット形状が不要となって削除されると、基準がなくなるために寸法がエラーになってしまう。

図-4 良くない寸法の記入方法

既存のカット形状と関係がないのであれば、例えば図-5のように既に親となっているフィーチャーから寸法を採るべきである。

  • * 土台のフィーチャー上にスケッチを描いているので、土台のフィーチャーがこの時点で既に親である。

図-5 土台の端から寸法(20mm)を記入しているので親が土台で統一されている

このように、フィーチャー同士で関連が発生する親子関係は、多くのメリットがある半面、親に左右されるので親をどこにするかということをしっかりと考慮してモデリングすることがとても重要となる。

ただし、あまり過敏になる必要はない。最近の各社製品は親子関係に起因するエラーが発生した場合に、原因の特定や修復方法の提示などの機能が充実しているので、思わぬエラーが発生しても慌てずに対応できるようになっている。

ここまで連載5回にわたって使用するCAD製品に特化せず、おおむね機械設計向け3D CADに共通する基本事項を解説してきた。

最低限これらを理解しておけば、どのCAD製品を使用しても迷うことなく使い始めることができるであろう。

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