2018年10月

実務者のためのCAD読本

BIM最前線(1)ロボットじゃないRobotで構造設計/全5回

建築系CAD 講師:鈴木裕二

「BIM最前線」の新しいシリーズがスタート。BIMアプリケーションとして使える構造解析ソフトウェア「Autodesk Robot」を取り上げる。Revitと構造解析ソフトウェアRobotをまるで一つのアプリケーションであるようにシームレスに使い、モデルを完成させることが本稿のテーマだ。

1.BIM時代の設計者は何でもこなす

「BIM最前線」という大胆なテーマで新しいシリーズをスタートする。直前での変更も大いにあり得るのだが、これから5回のテーマを以下と決めた。

  • BIM最前線1 「ロボットじゃないRobotで構造設計」(10月)
  • BIM最前線2 「BIMオペレーター、BIMマネージャーという仕事」(12月)
  • BIM最前線3 「米国Autodesk Universityに見るBIMの動向」(2月)
  • BIM最前線4 「インテリアデザインとBIM」(4月)
  • BIM最前線5 「BIMxはVRか?」(6月)

筆者は専門学校と大学で構造設計やBIMによる建築設計を教えている。これからの建築技術者像として、意匠、構造、設備の専門分野を越えて一人でこなすことが必要だと学生に話している。BIMによってそれが可能になった。コンピューターとBIMアプリケーションを使いこなすことによって、そんな技術者になることができる。「君たちの時代がやってきた」と偉そうに鼓舞しているわけだ。

筆者の考えるBIM時代の建築技術者像

設計者が意匠設計も構造計算も一人で同時に行う手順を紹介する。構造計算には日本で広く使われている「一貫構造計算ソフトウェア」は使わない。より自由にBIMアプリケーションとして使える構造解析ソフトウェア「Autodesk Robot」(正式名称 Robot Structural Analysis Professional)を取り上げる。Revitと構造解析ソフトウェアRobotをまるで一つのアプリケーションであるようにシームレスに使いながら、モデルを完成させることが本稿のテーマだ。うまくいけば学生たちにも強度検討しながら設計する楽しさを味わってもらえるだろう。

2.Revitで構造モデリング

ここでは屋根も外壁も間仕切り壁もある建築らしい建物から始めるより、次図のようなシンプルな構造で進めた方が分かりやすいだろう。Revitで標準の構造テンプレートからスタートし、Revit標準の構造部材を使ってモデリングする。

構造鉄骨造2階建て
平面計画X方向6m×1スパン、Y方向5m×1スパン
階高3m×2
積載荷重5000N / m2(5kN / m2)
地震力Ci=0.3
  • * 「m2=平方メートル」

主な構造部材

□-400×400×22(SN400相当)
大梁H-700×300×13×24(SN400)H-488×300×11×18(SN400)
小梁H-300×150×6.5×9(SN400)
デッキプレート+コンクリートt=160

Revitで構造モデルを作成

3.解析モデルと荷重を作成

Revitで構造モデルを作成すると、同時に解析モデルも出来上がっている。Revitで自動作成される解析モデルは、梁天・柱芯の構造芯を線で表したモデルだ。節点は黒い球で表示されている。大梁と小梁の取り合い部や大梁の剛接合位置にはもちろんこの節点が配置されている。

支点は「境界条件」として入力する。ここでは、分かりやすく柱脚を「ピン」とした。

Revit解析モデルで「境界条件」を入力

荷重は積載荷重5000N / m2と地震力としてY方向に積載荷重の0.3倍1500N / m2を作用させる。自重やX方向の地震力はここでは省略する。ここで大事なのは荷重ケースをきちんと設定して積載荷重と地震力を区別しておくことだ。いずれの荷重も床スラブに作用する荷重なので、「ホストされた面荷重」を使って、床スラブを選択して入力する。

  • * 「m2=平方メートル」

「ホストされた面荷重」を入力

4.Robotに書き出し

Revitでの入力は終わったので、「Robot Structural Analysisリンク」でRobotに「モデルを送信」する。ログを見るとこのモデルで、書き出しに7秒かかっている。

Revitの「Robot Structural Analysisリンク」とRobotに書き出す設定

書き出しのログ(7秒で完了)

Robotでも部材の形状や断面を表示させることができる。ただし梁芯を構造芯としてRevitからRobotに渡したのでRobotでは梁芯=FLとなる。

RevitからRobotに送られた構造モデル

5.Robotで応力計算

構造モデルの作成と荷重の入力はRevitで行ったので次は応力計算だ。[解析]ボタンで計算できる。このモデルだと1秒もかからず瞬時に終わってしまう。自重(DL)はRobotで自動的に計算される。Revitでの荷重入力で桁数を間違うなど、とんでもないミスをしていないか、反力の値で確認しておく。入力した荷重の方向・合計と反力の方向・合計があっていればまず問題はない。

各荷重ケースのモーメント図、せん断力図を表示させる。図は自動で見やすくスケール設定される。また図のように応力を図上にラベル表示させることも、表で数値として確認することもできる。節点変位も図のようにラベルと表で確認できる。

Robotで計算結果の地震時応力を表示

Robotで計算結果の地震時節点変位を表示

応力(Robotでは「力(Force)」)計算と同時に、応力度(Robotでは「応力(Stress)」)も計算される。

応力度とは例えば、地震時の梁に作用する最大曲げモーメント70.08kNmを梁H-488×300×11×18の断面係数2823cm3で除した値24.82N / cm2のことだ。この値がある限界を超えると破壊につながることになる重要な値だ。

  • * 「m2=平方メートル」、「cm3=立法センチメートル」、「cm2=平方センチメートル」

Robotで計算結果の地震時応力度を表示

6.強度を判定

応力度が求められると柱や梁が十分に安全かを判定する。ここが構造設計するという仕事の中身だ。RobotではAIJ-ASD 05(日本建築学会 許容応力度設計法 2005)の計算方法が使えるようになっている。

なぜか荷重の「組み合わせ」の追加が必要だったが、[解析]の実行で図のように地震時の短期応力についての検定が行われ、[OK]の表示がされる。

[解析]で部材が応力に対して安全かを検定(Robot)

計算の詳細についての解説は避けるが、柱に作用する軸力Ncが217.09kN、曲げモーメントMyが77.2kNmと、柱の変形が残ってしまう許容応力度の14%しか使っていないという結果になった。

7.Revitで構造モデルを再検討

柱にずいぶん余裕があることが分かったので、Revitに戻って構造モデルを再検討しよう。Robotで床スラブを変更したので、モデルもRobotのものを読み込み更新する。

RobotモデルをRevitに読み込むRevitの設定

Revitでは柱、梁の断面も思い切って小さくすることにする。床も階段が入る部分を開口とした。全体の重量が438kN(43.8t)から267kN(26.7t)と半分近くになった。

□-400×400×22を□-300×300×6に変更
大梁H-488×300×11×18をH-250×250×9×14に変更
ブレースL-75×75×6を追加

Revitで変更したモデルをRobotに書き出して応力計算を行う。モデルは次の図のようになる。

変更後のRevitモデルとRobotモデル

全体に剛性が低くなったので地震時の変形のチェックも必要だが、軸ブレースが効いて前のモデルと大きな変化はない。問題となるのは応力度だ。前のモデルでは許容応力度の14%とずいぶん余裕があったが、このモデルではどうだろう?

次の図が柱、梁、ブレースの計算結果だ。地震時に許容応力度の36%~31%が作用するという結果になった。

変更後のモデルの計算結果(Robot)

ここでRevitに戻りさらにスレンダーになるようにモデルを変更する。あるいは意匠モデルとの整合性を考え部材の配置などを再検討する。このようにRevitとRobotを行ったり来たりしながらモデルを作っていく。

BIMアプリケーションを使い、強度検討しながら構造、意匠を一つのモデルとして設計するというのはこのような作業になる。ある程度構造モデルが固まったら「一貫構造計算ソフトウェア」に渡して建築確認申請で使う計算書を作成する。梁伏図や軸組図はRevitで作成する。

冒頭で書いたように筆者としては専門学校、大学の授業でぜひこのBIMによる設計手法を取り入れたいと考えている。さてBIM時代の新しい建築技術者を育てることはできるだろうか。

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