2019年 3月

実務者のためのCAD読本

「フィーチャーの履歴」を使いこなす【モデリング実践/第3回】

監修:山田学 執筆:草野多恵

設計を行うための便利なツールとして3D CADが広く普及してきた。CADはあくまで設計を支援するためのツールだが、3D CADを設計に取り入れることにより、設計を効率よく、高品質に、より短時間で行うことが可能になっている。前回の連載では3D CADの特長、仕組みなどを理解し、効率的に設計ができる理由を解説したが、今回の連載ではより具体的にそれぞれの仕組みを使用する方法を解説する。

この連載について

前回の連載(実務者のためのCAD読本「モデリング手法」全5回)を踏まえ、本連載ではフィーチャーとその履歴についての理解を深め、モデリングをスムーズに行うコツを紹介する。

「フィーチャーの履歴」を理解する(モデリング手法/第3回)

シリーズ記事

前回の連載では、主にフィーチャーベース モデリングにおいて履歴が記録されるメリットを説明した。フィーチャーベースでのモデリング手法はその言葉どおり、機能(feature)や特長を表した形状を積み重ねて部品形状を作り込んでいく手法だ。これにより、単なる3D形状を作成するのではなく機能をモデリングする、つまり「設計」が可能となる。

第3回「モデリング実践」となる今回は、より具体的なモデリング手法を紹介しながら、履歴を使いこなすポイントを説明する。

1.「押し出し」の深さ指示には意味がある

「押し出し」フィーチャーを使用してカット形状を作成する場合、その深さ(奥行き長さ)は、その機能を考慮して適切に指示をすることが効果的である。以下にその例を示す。

(1)例えば、図-1の形状の縦面に、図-2のような貫通穴を開ける場合を考えてみよう。

図-1 貫通穴を開ける前の形状

図-2 貫通穴を開けた後の形状

(2)貫通穴をモデリングする際に、縦面の厚みが20mmとすると、穴の奥行きも20mmと指定すれば事足りる。これにより、作成された穴は貫通状態となる。

図-3 穴の奥行きを20mmで指定する場合

図-4 穴が貫通した状態

(3)穴を開けた縦面の厚みを、設計変更のため35mmに修正する場合を考える。手順(2)で穴の深さを20mmに設定しているので、貫通状態にするには穴の深さもあわせて修正する必要がある。つまり、一カ所を修正するだけでもほかの形状への影響を配慮する必要があるため、常に全体に対する気配りを怠ることができない。図-5と図-6を見ても、貫通していないことが分かるだろう。

図-5 断面図

図-6 斜めから見た図

(4)そもそも、穴の奥行きを指定する場合、貫通穴にしたいという明確な設計意図がある場合は、数値で指定するのではなく、貫通させるためのオプションを使用することで、常に貫通状態を保つことができ、二度手間のような修正をする必要がなくなる。これによって、厚みが設計途中で変更になった場合でも常に貫通状態が保たれる。(SOLIDWORKSの場合は「全貫通」、Inventorの場合は「すべて」)

図-7 穴の押し出し距離指定を「全貫通」に変更する例

図-8 穴の深さを「全貫通」に変更した結果

フィーチャーの「履歴」が記録されるということは、このように穴を貫通するという「機能」、つまり設計意図を3Dモデルに組み込むことになる。これにより、設計変更が効率的に行えるようになり、修正ミスや修正漏れを防ぐことが可能だ。

2. 全てのジオメトリ(スケッチ、ソリッドフィーチャー、平面などの仮想要素の総称)は、モデリング順序に影響する

では、もう一つの例を示す。

例えば、図-9の形状を図-10のように、上面の突起形状の位置を移動することになったという場合を考えてみよう。

図-9 当初の設計形状

図-10 設計変更後の形状

上面の突起は図-11のように作成している。

図-11 スケッチ平面を利用した上面突起形状

これを、図-10のような位置に移動するには、移動先の位置にスケッチ平面となりうる平面を配置し、スケッチ平面を移動させるコマンドを実行すればよい(SOLIDWORKSの場合は「スケッチ平面編集」、Inventorの場合は「スケッチを再アタッチ」)。

このとき、移動先の位置に適切な平面がない場合は仮想的な平面を移動先の位置に作成し、それを利用する(SOLIDWORKSの場合は「参照平面」、Inventorの場合は「作業平面」)。

図-12 変更位置に作業平面を追加した状態

しかし、上記のように変更したいと考えてから平面を作成すると、その平面は作成順として最新のものとなる。このままの状態で「スケッチ平面編集」、または「スケッチを再アタッチ」を実行するが(図-13)、最後に作成したジオメトリは画面から消えているので選択平面が見当たらず実行できない(図-14)。

修正しようとしているフィーチャーよりも後に作成されたジオメトリを参照先として使用することはできないのである。なぜなら、突起形状を作成した時点では存在しないジオメトリだからである。

図-13 「スケッチを再アタッチ」の実行

図-14 「スケッチを再アタッチ」が実行できない状態

そこで、作業平面のモデリング順序を上面突起の前に移動する(各CAD製品とも、フィーチャー名リスト上でのドラッグ操作で可能)。その後、再度「スケッチを再アタッチ」を実行すると、図-15のように選択することが可能になる。

図-15 作業平面のモデリング順序を最初のスケッチ平面より前に移動した結果

このように、履歴というのはただ単に記録されるというものではなく、出来上がりの形状を大きく左右するものだ。また、同じフィーチャーの積み重ねであったとしても、その作成順が形状に大きく影響することを理解していただけたのではないかと思う。モデルを作成する場合には、これらを十分に理解して、どのような形状が作成されることになるのかを想像しながら進めることで、より効率のよい設計が可能となる。

次回は、パラメトリックについて理解を深めていくための解説をする。

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