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世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術  〜図面は英語に勝る公用語〜 1st STEP 第4回:ローカルルールと新旧ルール /全5回世界で戦うための製図技術【4】ローカルルールと新旧ルール

4.ローカルルールと新旧ルール4.ローカルルールと新旧ルール

最新JIS製図を用いた設計製図のセミナーを全国各地で開催していると、一つ困った現象が発生する。それは、少しでもJIS製図と違った表記をすると図面として失格であるという強迫観念を受講者が持つことである。 「うちの会社ではこんな表現をするんですが、これはJIS製図として正しいですか?」といった具合である。 そこで私は、「JIS製図は、あくまでもガイドラインであり、すべてのパターンを網羅しているわけではありません。したがって、ルールにないものは読み手が間違った解釈をしないよう自分で考えればよいのです」と回答している。

1)ローカルルールについて

いくつか、JIS製図の解釈を拡大解釈したり、設計意図を表現するために特殊な描き方をしたりするローカルルール的な指示事例があるので紹介する。

例えば図1のように、板金部品でコの字型に曲げられた部品において、表裏に開いた穴の個数を表現する際に次のような記入方法が考えられる。

一つの投影面で裏面にある穴の数まで含めて表記する場合をパターン1と呼ぶことにする。

投影面に表示されている穴の個数だけを表記し側面図に「面Aと同じ」などと表記することで裏面に同一の穴が開いていることを表記する場合をパターン2と呼ぶことにする。

図1 穴の個数を簡略化して表現したいローカルルールの事例

私見であるが、実務設計においてパターン1と2のどちらも間違った解釈にはならず、問題ないと考えている。ただし、厳密にJISのルールに則るのであれば、パターン2の方がより正確にルールを守っているといえる。

その理由として、JISによると「一群の同一寸法のボルト穴などの表示において、穴の総数は同一箇所の一群の穴の総数(例えば、両側のフランジを持つ管継ぎ手ならば、片側のフランジについての総数)を記入する」とあるためである。

もうひとつ、穴の個数に関して質問の多い事例を紹介する。 図2のように、同一面に複数の穴が開いている場合、三つの穴がセットで機能を果たし、それが3箇所に分散していることから「3−3×φ10」と表記する考え方がある。設計者の意思を表現するという面でその気持ちは痛いほど理解できる。 しかし、図1の事例でも解説したように、「穴の総数は同一箇所の一群の穴の総数で記入する」というルールに従うのであれば、単純に穴の総数として「9×φ10」と表記し、寸法線で設計意図(3個の穴がセットになって3箇所あるよ)と表現するほうがJIS製図のルールに則った図面であるといえる。

図2 穴の個数を機能で表現したい場合のローカルルール事例

上記2例は、JIS製図のルールに則っているから図面として正しい、則っていないから図面として誤りであると決めつけるには短絡すぎると考える。

2)JIS製図における新旧記号

JIS製図は国際標準であるISOに準拠するよう定期的に改正が加えられている。 近年の変更では2000年前後と2010年に比較的大きな変更があった。 今回は、2000年前後に改正が加えられたが、設計現場で周知されていない代表的な事例を紹介する。

なお、2010年に改正された内容は次回の記事で解説する。 新旧記号が混在する記号で最も顕著であるものが面の肌記号である。 面の粗さ記号は図3に示すように、最も古い三角記号、旧記号、ISOに準拠する新記号の3種類が企業ごとに標準化されて使われている。

図3 新旧3種類の面の粗さ記号

その他、投影図の描き方が変更された例もある。

従来、ねじは同心2重円で表し、ねじの谷底を表す線のみ細い線として描いていた。1998年に、ねじの谷底は細い線で描いた円周の3/4にほぼ等しい円の一部で表すと改正された。

改正されて10年以上経っても、いまだに従来の2重円で表す企業のほうが多い。

加えて、同一形状の穴やねじが複数存在するときに個数表記を用いるが、旧記号では個数に続けて「−(ハイフン)」を用いていたが、国際標準に従い「×」に改正されている。

図4 ねじの表記(めねじの例)と個数表記このように、明確に規格が変更されているにも関わらず、設計現場では昔からの記号が引き継がれて使用されていることが多い。設計者は日常業務をこなすことが精一杯で、JIS製図の改定についてその情報を得る機会や手段が少ないことが原因であると思われる。

以上のように、図面にローカルルールや新旧記号の混在があったとしても、従来どおり業務は進行できるものである。 JIS製図の本質を知ったうえで、図面の読み手が誤った解釈をしなければ、より詳しく設計意図を伝える意味で多少のアレンジはあってもよいという気持ちで図面を描いてもらいたい。

次回はJIS製図において、2010年に改正されたばかりの最新の内容について、設計実務の中でよく使われるであろう記号を選択し解説しよう。 

参考文献:「図面って、どない描くねん!」(日刊工業新聞社 山田学著)

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