ビジネスお役立ち情報 > 実務者のためのCAD読本 > 世界で戦うための製図技術 3rd STEP【4】 加工方法を図面に表す

実務者のためのCAD読本実務者のためのCAD読本

実務者のためのCAD読本のトップへ

機械系CAD 講師:山田学

世界で戦えるGLOBALエンジニアになるための製図技術

3rd STEP 第4回:加工方法を図面に表す/全5回

世界で戦うための製図技術 3rd STEP【4】 加工方法を図面に表す

4加工方法を図面に表す

前回までに、設計機能を考えながらVブロックとハウジングの寸法記入を行った。 今回は、その他の構成部品である締め付けボルト(画像3)とハンドル(画像4)の寸法記入を考えてみよう。

あらためて、軸を固定する治具(じぐ)の組立図を確認しておく(画像1、2)。

画像1

軸を固定する治具の組立図

画像2

治具とVブロック

1…Vブロック
2…ハウジング
3…締め付けボルト
4…ハンドル

画像3

締め付けボルト

締め付けボルト

画像4

ハンドル

ハンドル

組立図から、締め付けボルトはハウジングとねじで組み合わさっている。 従って、締め付けボルトはねじで回転するため、回転運動ZBは機能的にフリーとなるような構造である(画像5)。
また、1カ所だけであるが、一定の長さでねじ部がかみ合わさっていることから、締め付けボルトを回さない限り動かない状態である。そのため、X軸方向の併進運動XAと回転運動XB、Y軸方向の併進運動YAと回転運動YB、Z軸方向の回転運動ZAが拘束されていると見なす(画像6)。

画像5

回転運動ZBは機能的にフリーとなる構造

画像6

併進運動XAと回転運動XB、併進運動YAと回転運動YB、回転運動ZAが拘束されている

ここで、固定されるべき軸がない状態で締め付けボルトをVブロックに接するまで締め込むと下図(画像7)の状態となり、ねじの有効長さはノブの根元までなくても問題ないことが分かる。

画像7

固定軸がない状態で締め付けボルトをVブロックまで締め込む

それでは、締め付けボルトの投影図から考えよう。
前回までのVブロックやハウジングと異なり、軸物であるためハンドル挿入部の穴を除いて、ほとんどが旋盤で加工される。そのため、投影図は中心軸を水平に置き、加工量の多い方を右側に向けることがマナーである。
図面を描く際に、下図(画像8)のような加工工程を少しイメージできると、適格な図面が描けるはずである。

画像8

加工工程をイメージして図面を描く

次に、軸を押さえつける部分である先端部の直径と長さ、端部(たんぶ)の面取りを記入する。
この部品は比較的細長い部品であるため、旋盤加工時にセンター穴(画像9)を開けて、旋盤の芯(しん)押しセンターによって右端面を補助する可能性を否定できない。
しかし、センター穴を残したままで軸を固定すると、穴の端部のエッジによって相手軸の表面に傷をつける恐れがある。そこで、「センター穴を残してはいけない」という意味の記号を軸の端面に指示しておく(画像10)。

画像9

センター穴について

画像10

「センター穴を残してはいけない」という記号を軸の端面に指示

図面上でセンター穴を残してはいけないと指示しても、加工上はセンター穴がないと加工が難しくなる場合がある。このとき、加工者は図面で指示された全長よりも少し長めに材料を加工して、そこにセンター穴を設け、部品完成間際にセンター穴部を切り落として対応するのである(画像11)。

画像11

最終的に切断して、部品を図面通りの形状に仕上げる

次に、ねじの種類とサイズ、ねじの有効長さ、角部の面取りを合わせて寸法記入する(画像12)。

画像12

ねじの種類、サイズ、有効長さを寸法記入

次に、大径部の面取りと穴の寸法を記入する(画像13)。穴はハンドルを挿入して回転力を与えるだけの機能であるため、特に左右方向の位置はそれほど重要ではない。穴位置は投影図の上下方向では中心線上にあり、左右方向では幅22mmの中央に配置しているとして、寸法は省略している。
また、ハンドルによって大きなねじり荷重を受けるかもしれないため、応力緩和のために小径部との段差部にR2と大きめの隅Rをつけている。

※「φ10」という基準寸法は、ハンドルの外形寸法と同一となるため、設計意図として、組立時の隙間(すきま)を保証するための寸法公差が両部品に必要である。

画像13

組立時の隙間を保証するための寸法公差が締め付けボルト、ハンドル両部品に必要

最後に、大径部は手回しノブとしても使用できるよう、表面にローレット加工を指示する。
ローレットには、その模様によって「平目」と「あや目」の2種類がある(画像14)ため、どちらで加工するのか投影図に簡易模様を指示しなければいけない。本投影図は、あや目の模様を表している。
また、模様の大きさにも種類があり、その大きさを指示することが望ましく、注記でモジュール0.3という大きさを指示する。

画像14

ローレット

ローレットとは、丸軸に凹凸のギザギザを入れて滑り止めなどに利用したり、圧入部品の表面に加工することで相手部品に食いつかせ回り止めにしたりするものである。

次にハンドルの機能を組立図から考えてみよう。
ハンドルの形状は、段差のない単純円筒軸である。締め付けボルトの穴に挿入して使用することから、軸線方向の併進運動と円筒面から見た回転運動がフリーとなる(画像15)。

画像15

ハンドルの機能

締め付けボルトと同様に円筒軸であるため、中心軸を水平方向にして投影図をレイアウトする(画像16)。
特に変化のない形状であるため、ハンドルの寸法は直径と全長、面取りの3カ所だけですべてを表現できる。

※「φ10」という基準寸法は、締め付けボルトの穴径寸法と同一となるため、設計意図として、組立時の隙間を保証するための寸法公差が両部品に必要である。

画像16

組立時の隙間を保証するための寸法公差が締め付けボルト、ハンドル両部品に必要

以上、締め付けボルトとハンドルの図面が完了し、軸を固定する治具の部品すべての寸法を記入することができた。

今回の2部品は、どちらも円筒軸形状であったため、旋盤で加工することを前提として図面を作成しなければいけない。
寸法記入の際には、関連する形状(直径と奥行き、面取りなど)をまとめて記入することが、寸法漏れを防ぎつつ、加工者に読みやすい図面を提供できるコツである。

図面は投影図や寸法の情報だけを記入するものではない。次回は、今までに作成した部品の表題欄に記入する部品名称や材質、表面処理、熱処理はどうやって決めていけばよいかの一例を紹介する。

企業のITセキュリティ講座
企業のITセキュリティ講座