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建築系CAD 講師:鈴木裕二

BIMの最新事情レポート

第1回:照明シミュレーションは設計の道具か?/全5回

BIMの最新事情レポート【1】 照明シミュレーションは設計の道具か?/全5回

1新しいテーマ

今回から新しいテーマ「BIMの最新事情レポート」に挑戦する。「へぇそうなんだ」と読者の皆さんに思ってもらえるようなテーマを探してきて、できるだけ掘り下げて紹介したいと思う。
とりあえず連載のテーマとして次のようなものを挙げてみた。順序は変わるかもしれないが、おおむねこのような内容を取り上げたいと考えている。

  • ・照明シミュレーションは設計の道具か?
  • ・意匠−構造−設備モデルを重ねるか重ねないか?
  • ・設備モデルの入力には手間がかかるが価値はあるか?
  • ・BIMでプレキャスト構造を画期的に合理化できるか?
  • ・現場では誰がどんな失敗をするか、BIMで防げるか?
  • ・BIMによる設計・施工で、施主は喜んだか?

2照明シミュレーションの話をもう一度

前の連載『BIMを本気で使いこなす』の第4回「BIMで改修設計をやってみた(2)」でArchiCADを使った保育所の照明シミュレーションを紹介した。

BIMを本気で使いこなす 第4回:BIMで改修設計をやってみた(2)
mypage.otsuka-shokai.co.jp/html-files/it/cad_lecture/201502.html

ArchiCAD 18から登場したCineRender by MAXONというレンダリングのエンジンを使えば、照明器具メーカーが提供している配光データのIESというファイルを読み込んで照度のシミュレーションができる。照明の専門家ではない建築の設計者も、照明器具の選定や配置に悩まなくてすむ。建築の設計者はどんどん自分の手で照明シミュレーションをしようというような話だった。

ArchiCADによる照明シミュレーションを行った画像

ArchiCADによる照明シミュレーション

同じ話をいくつかのセミナーでも話した。すると読者やセミナー参加者からするどい質問やご指摘をいくつか頂いた。ここではそれらに答えて、さらに照明シミュレーションは設計の道具として意味があるのか、もう一度考えてみたい。

3Revitでも配光データは使えるか?

まず多かったのはRevitでも同じことができるのかという質問だ。ArchiCADとRevit、BIM製品のライバルのように言われているが、ゼネコンや設計会社でArchiCADとRevitの両方を使っているところも多い。

Revitでも配光データのIESファイルを使うことができる。オートデスク社Webサイト「Revit Products-Learn & Explore-光源用の IES ファイルを指定する」に詳細が掲載されているが、手順は難しくない。適当な照明ファミリを開いて、光源定義で「照明の分散」を「フォトメトリック ウェブ」として図のように配光データのIESファイルを読み込むだけだ。色温度の設定も「K(ケルビン)」という単位を使って設定できるので、照明器具メーカーが出している3,500Kの「温白色」と4,000Kの「ナチュラルホワイト」の2種類のLEDランプを使うようにした。

これで配光データを再現する照明器具2種類を作ってみた。

オートデスク社Webサイト「Revit Products-Learn & Explore-光源用の IES ファイルを指定する」
http://knowledge.autodesk.com/support/revit-products/learn-explore/caas/CloudHelp/cloudhelp/2015/JPN/Revit-DocumentPresent/files/GUID-4F1C8175-0F14-4C45-AA08-CE0304A15700-htm.html

配光データを使った照明ファミリをRevitで作成した画面

配光データを使った照明ファミリをRevitで作成

4Revitで照明シミュレーション

Revitでこの照明器具を配置し、レンダリングしてみよう。建物のデータはArchiCADからIFCファイル経由でRevitに持ってきた。

建物の形状はArchiCADから読み込まれたが、マテリアルはRevitで特に与えていないので、石こうで作ったモデルのように真っ白になっている。

色温度の異なる照明器具を使って、その結果の比較も行った。「保育所には3,500Kの方がいいな」というシミュレーションができる。もちろん本来の目的のどの辺りまで明るいか、影はどこに出るかという照度のシミュレーションもできる。当たり前のことだが、ArchiCADと比べてほぼ同じ結果になっている。

色温度3,500Kの「温白色」の照明器具を使用したシミュレーション画面

色温度3,500Kの「温白色」の照明器具を使用

色温度4,000Kの「ナチュラルホワイト」の照明器具を使用したシミュレーション画面

色温度4,000Kの「ナチュラルホワイト」の照明器具を使用

5AutoCADでもできますか?

「AutoCADでもできますか?」これもよく聞かれる。AutoCADはBIMではないが、「できる」のだ。ただし簡易版のAutoCAD LTではレンダリングはできない。光源の種類に「スポットライト」「点光源」と共に「配光」があり、「配光」を選択することで、配光データのIESファイルを読み込むことができる。

建物データはRevitからSATファイルに書き出し、AutoCADで読み込んだ。AutoCADも中では壁やスラブという建築要素としての意味は失われ、サーフェスという面の要素になっている。照明のシミュレーションなので面の要素さえあれば問題はない。

図がAutoCAD 2015を使ってレンダリングした結果だ。設定に何か足りないのか、影の部分が真っ黒になっているが、明るさがどこまで行き渡るかという照度のシミュレーションとしては使える状態だ。

AutoCAD 2015でレンダリングした画面

AutoCAD 2015で配光光源を配置してレンダリング

6AutoCAD 2016でもやってみた

BIMというテーマから外れるが、最近リリースされたAutoCAD 2016でも同じモデルと照明でレンダリングしてみた。AutoCAD 2016ではレンダリングエンジンが変わったとのことだ。確かに何の設定なしでも図のようにコントラストの調整されたきれいな結果を得ることができた。

照明のプロパティパレットでは配光データが図で表示され、分かりやすくなっている。

もちろん照明のシミュレーションとしてはAutoCADも「使える」という結果だ。

AutoCAD 2016でレンダリングした画面

AutoCAD 2016で配光光源を配置してレンダリング

7どこまでシミュレーションするの?

さて、セミナーでの私の話の後に設計者である友人からこんな疑問を投げかけられた。

「どこまで正確な照明シミュレーションを求めるのですか?設計者としてはこの照明を使えばこんな感じになります、どうですか?とイメージを表現する方が重要ではないでしょうか。あくまでソフトウェアはそのイメージを表現するためのツールだと思います」

そのとおりだ。照度という数字はもちろん大事だが、照明は雰囲気をつくる道具でもある。照明の色、壁紙や建具、床、さらに家具の材質、反射率によって全く異なる雰囲気になる。建築の設計者はそれを理解していてその「雰囲気」を表現しなければいけない。

つい数字に頼って「これでいい」と、表現の部分に手抜きをしてしまう。もっと勉強しなければと痛感させられた指摘だ。その友人がある設計で作った室内パースがこれだ。妖艶なクラブの雰囲気が表現されている。

あるインテリアデザイン提案(岡田眞一設計室 提供)の画像

あるインテリアデザイン提案(岡田眞一設計室 提供)

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