2019年 1月

実務者のためのCAD読本

サーフェスの利用方法【モデリング実践/第2回】

監修:山田学 執筆:草野多恵

この連載について

昨今では設計を行うための便利なツールとして3D CADが広く普及してきた。CADはあくまで設計を支援するためのツールだが、3D CADを設計に取り入れることにより、効率よく、高品質な設計を、より短時間で行うことが可能になっている。前回の連載では、3D CADの特長、仕組みなどを理解し、効率的に設計ができる理由を解説したが、今回の連載ではより具体的に各仕組みを使用する方法を解説する。

シリーズ記事

はじめに

前回の連載、『第2回 モデリング手法 ~「ソリッド」と「サーフェス」を理解する』にて、機械設計向けの3D CADによるモデリングには「ソリッド」と「サーフェス」の二種類があることを説明した。また、どのような形状をどのモデリング手法で作成する場合でも、最終的にはソリッドで仕上げる、ということも説明した。

第2回 モデリング手法 ~「ソリッド」と「サーフェス」を理解する

今回の連載は以下の5回を予定している。

  • 第1回 モデリング実践 ~ 「フィーチャーベース」と「ダイレクト」、その使い分け
  • 第2回 モデリング実践 ~ サーフェスの利用方法
  • 第3回 モデリング実践 ~ 「フィーチャーの履歴」を使いこなす
  • 第4回 モデリング実践 ~ 「パラメトリック」を使いこなす
  • 第5回 モデリング実践 ~ 親子関係を管理する

従ってサーフェスは、ソリッドモデリングのみでは作成が困難な形状を作る際に、補助的に使用する手法となっている。ソリッドモデリングのみでは作成が困難な形状というのは、例えば、コンシューマー製品によくあるような滑らかな曲面である。この記事では、その一例として、PC用のマウスのモデリングを紹介する。
なお、今回はAutodesk Inventor を使用するが、ほとんどの機械設計用 3D CAD製品(SOLIDWORKS等)で、同様の操作が可能となっている。

パソコン用のマウスのモデリングを紹介

今回は、このようなマウスの外形形状を作成してみる。(図-1)

実際のマウスは、複数の部品を組み合わせて成り立っているが、外形は全体的に滑らかな形状で連なっているケースがほとんどだ。このようなものを設計する場合、まず外観を一体でデザインし、形状が決まったら各パーツに分割していく、という手法を選択することが多い。以下の例では、その外観形状を決定するためにサーフェスを利用している。

図-1 マウス外観完成図

以下のように作成を進めていく。

このマウスを真横から見た形状がこちらである。底面は平ら、側面は上に向かって若干の勾配があるが、基本的には直線状に伸びている。そして上面は滑らかな曲面だ。(図-2)

図-2 マウス外観側面図

このような場合、上面の曲面部分のみをサーフェスで、そのほかの部分はソリッドで作成する。それぞれを組み合わせて、最終的に上の図のような外形に仕上げていく。

大まかな手順を以下に示すが、これはあくまで一例だ。正解は一つではなく、工夫次第で、さまざまな作り方が考えられるだろう。

(1)上面を表現するサーフェスを作成する。

サーフェスの中央にエッジが入っているように見えるが、これは左右対称に作成した際に表示されるもので、角が立っているわけではない。

上面を表現するサーフェス

(2)土台の部分を作成する。

サーフェス面の直下に土台の基本形状をスケッチにて作成しておく。

土台部分を作成

土台の部分はソリッドで作成するために、「押し出し」を使用しているが、その際の高さ指定として「次へ」(注1)というオプションを使用することで、高さ方向の位置に存在しているサーフェス面まで押し出される。このときに、そのサーフェスが曲面であれば、図のように上面が曲面の押し出し形状となる。

  • (注1)SOLIDWORKSの場合は「次のボディまで」コマンドとなる。

「次へ」の対象となるサーフェスを選択した直後の状態

押し出しを完了した形状

(3)側面が垂直に立ち上がっているので、変化を付けるために勾配を設ける。

両側面と後ろ側の面は直線状なので、特にサーフェスは利用せず、「面の勾配」(注2)コマンドを使用して傾斜を追加する。

  • (注2)SOLIDWORKSの場合は「抜き勾配」コマンドとなる

両側面

後ろ側の面

(4)前側の面は、丸みを帯びた形状にしたいので、勾配コマンドは使用せず、サーフェスを利用する。

丸みを帯びた形状を作成

前方の理想的な形状を示すサーフェスを用意する。

理想的な形状との不足分

(5)「面の置換」(注3)機能を使用して、作成したサーフェスまで指定した面を伸ばす、または引っ込めることができる。

この場合は、指定した面が伸ばされて、黄色のソリッドの表面がサーフェス面と同じ形状になった。

  • (注3)SOLIDWORKSの場合は「面置き換え」コマンドとなる。

面の置き換え機能を使用

(6)このような形状になる。

形状の確認

(7)後は鋭角エッジにフィレットを追加して仕上げる。

完成

このように、ソリッドモデリングだけでは表現しづらい部分は、サーフェスを用いて形状を作成しておく。そして「押し出し」等で作成したソリッド形状の表面をサーフェス面で置き換えることで、直線的な面を曲面に変更することが可能となる。もし、デザインの検討後に曲面形状の変更が必要になった場合は、履歴をさかのぼってサーフェスの形状を修正すれば、後続のソリッド形状にも自動的に反映される。この点は、前回までで説明してきたモデリングと同様である。
少し複雑な形状を3D CADで表現するに当たっては、全体を一気に作りこむことを考えるだけではなく、このように部分に分けて考えて組み合わせる手法も非常に有効である。

次回は、フィーチャー履歴の使いこなし方について解説する。

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執筆者紹介

草野多恵

大手メーカーの宇宙航空事業部門にて、設計から納品までのプロセス管理を担当。
製造業での実務経験を生かし、CADベンダーで約20年間一貫して製造業向けに3D CADの営業技術などを担当。
現在はフリーランスとして、効果的なCAD導入を支援する活動を行っている。

監修・執筆

山田学

ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。設計製図の企業内教育を種に活動。著書に『図面って、どない描くねん!』『めっちゃメカメカ! リンク機構99→∞』(共に日刊工業新聞社刊)など。

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