この連載について
昨今では設計を行うための便利なツールとして3D CADが広く普及してきた。CADはあくまで設計を支援するためのツールだが、3D CADを設計に取り入れることにより、効率よく、高品質な設計を、より短時間で行うことが可能になっている。前回の連載では、3D CADの特長、仕組みなどを理解し、効率的に設計ができる理由を解説したが、今回の連載ではより具体的に各仕組みを使用する方法を解説する。
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はじめに
前回の連載、『第2回 モデリング手法 ~「ソリッド」と「サーフェス」を理解する』にて、機械設計向けの3D CADによるモデリングには「ソリッド」と「サーフェス」の二種類があることを説明した。また、どのような形状をどのモデリング手法で作成する場合でも、最終的にはソリッドで仕上げる、ということも説明した。
第2回 モデリング手法 ~「ソリッド」と「サーフェス」を理解する
今回の連載は以下の5回を予定している。
- 第1回 モデリング実践 ~ 「フィーチャーベース」と「ダイレクト」、その使い分け
- 第2回 モデリング実践 ~ サーフェスの利用方法
- 第3回 モデリング実践 ~ 「フィーチャーの履歴」を使いこなす
- 第4回 モデリング実践 ~ 「パラメトリック」を使いこなす
- 第5回 モデリング実践 ~ 親子関係を管理する
従ってサーフェスは、ソリッドモデリングのみでは作成が困難な形状を作る際に、補助的に使用する手法となっている。ソリッドモデリングのみでは作成が困難な形状というのは、例えば、コンシューマー製品によくあるような滑らかな曲面である。この記事では、その一例として、PC用のマウスのモデリングを紹介する。
なお、今回はAutodesk Inventor を使用するが、ほとんどの機械設計用 3D CAD製品(SOLIDWORKS等)で、同様の操作が可能となっている。
パソコン用のマウスのモデリングを紹介
今回は、このようなマウスの外形形状を作成してみる。(図-1)
実際のマウスは、複数の部品を組み合わせて成り立っているが、外形は全体的に滑らかな形状で連なっているケースがほとんどだ。このようなものを設計する場合、まず外観を一体でデザインし、形状が決まったら各パーツに分割していく、という手法を選択することが多い。以下の例では、その外観形状を決定するためにサーフェスを利用している。
図-1 マウス外観完成図
以下のように作成を進めていく。
このマウスを真横から見た形状がこちらである。底面は平ら、側面は上に向かって若干の勾配があるが、基本的には直線状に伸びている。そして上面は滑らかな曲面だ。(図-2)
図-2 マウス外観側面図
このような場合、上面の曲面部分のみをサーフェスで、そのほかの部分はソリッドで作成する。それぞれを組み合わせて、最終的に上の図のような外形に仕上げていく。
大まかな手順を以下に示すが、これはあくまで一例だ。正解は一つではなく、工夫次第で、さまざまな作り方が考えられるだろう。
(1)上面を表現するサーフェスを作成する。
サーフェスの中央にエッジが入っているように見えるが、これは左右対称に作成した際に表示されるもので、角が立っているわけではない。
上面を表現するサーフェス
(2)土台の部分を作成する。
サーフェス面の直下に土台の基本形状をスケッチにて作成しておく。
土台部分を作成
土台の部分はソリッドで作成するために、「押し出し」を使用しているが、その際の高さ指定として「次へ」(注1)というオプションを使用することで、高さ方向の位置に存在しているサーフェス面まで押し出される。このときに、そのサーフェスが曲面であれば、図のように上面が曲面の押し出し形状となる。
- (注1)SOLIDWORKSの場合は「次のボディまで」コマンドとなる。
「次へ」の対象となるサーフェスを選択した直後の状態
押し出しを完了した形状