2020年 7月

実務者のためのCAD読本

モデリング開始前の準備と基本知識【基本要素形状のモデリング/第1回】

監修:山田学 執筆:草野多恵

3Dで設計を開始するに当たり、実際にCADの操作をする前にCADの設定や設計の進め方をきちんと計画および検討することで、後々の設計変更にも対応しやすくなる。今回は具体的に何を計画、検討しておくべきかを解説する。

この連載について

基本要素を用いながら、より具体的な設計使用方法を解説する。また、主要な3D CADでの手法も併せて解説する。

シリーズ記事

CADの3D空間にはXYZが存在している

3D CADで新規ファイルを作成すると、何もない空間が表示されている。しかし、何もないように見えるが実はそこには原点が存在しており、それを基準にXYZの各軸と平面が仮想的に用意されている。

図-1 SOLIDWORKSの原点とXYZ平面

図-2 Autodesk Inventorの原点とXYZ平面

最初に形状を作成する際には、その仮想平面三つのうちのいずれかをスケッチ平面として使用し、形状作成を開始することになる。3Dで設計するメリットの一つとして、形状に設計情報を付与できるという点があることから、この3D空間内の原点をこれから設計する部品の設計基準と捉えて設計を開始することが望ましいとされている。

部品の設計基準は、その部品の性質によって決める必要がある。例えば以下のようなケースが考えられる。

  • 軸部品(回転体):軸の中心
  • 加工の基準位置
  • 相手部品に合わせた形状の部品:相手部品との組み立て基準位置

これらはあくまで目安であり、100%きっちりと順守しなければならないというものではない。使用していくうちにやりやすい方法が見えてきたらそれぞれのルールを確立すればよいだろう。

最初の形状のためのスケッチはどう作成すべきか?

では、最初の形状を作成するためのスケッチは、XY、YZ、XZのどの平面に描くのがよいだろうか?
これも設計する部品の性質次第ではあるが、目安としての基準がある。

以下の二つの図は、同じ形状を「押し出し」で作成している。見え方の違いはスケッチ平面が異なっていることにある。つまりどのように見えるように作りたいかによって、選択する平面を考慮する必要がある、ということである。

図-3 YZ平面をスケッチ平面として選択した場合

図-4 XZ平面をスケッチ平面として選択した場合

さらに、図-3、図-4は共に、片側に押し出しているが、もしこの円柱の基準を長手方向の中央に取りたいのであれば、押し出しオプションとしては「片側」ではなく「両側均等」にするべきである。

図-5 押し出し方向を「両側均等」にした例

3Dモデルを使用して2D図面化する場合

3Dモデルを使用して2D図面化する場合には、もう一つ考慮しておくとよいことがある。SOLIDWORKS、Autodesk Inventorの場合は、2D図面化の際にXY平面が正面図として配置されるように設定されている。(変更は可能)従って、後に2D図面化をするのであれば、スケッチ平面の決定においてこの点も考慮するのがよいと考えられる。

図-6 同一CAD上で2D図面作成を行う(Autodesk Inventorの場合)

図-6はAutodesk Inventorを例に図示しているが、SOLIDWORKSも同様の仕様になっている。
ただし、例外のCADもある。Autodesk Fusion 360である。Fusion 360 には、座標系の上方向をYとZ、どちらにするのかを選択する機能がある。この設定によって、正面図方向がXYになる場合と、XZになる場合があるので、どちらを使用して3Dモデル作成を開始するかを考慮する必要がある。
Fusion 360にこのような機能があるのは、CADソフト内に構造解析機能やCAM機能が内包されているからだと推測される。解析やCAMでは、Zを上方向に設定するのが一般的であるため、これらへの流用を考慮しているのであろう。

図-7 Fusion 360で設定できる座標系の上方向

以上のことから、3D CADで3Dモデル作成を開始する前には、その部品の持つ意味、後工程での利用の有無や方法などを考慮して開始するようにしたい。もちろん、設計途中で設計変更が入ることは十分に想定されるので、ここまで解説したことを全て順守することは難しいが、最低限、開始前に分かっていることは全て整理してから作業を開始することが望ましい。

そして最後にもう一つ、ファイルに設定されている単位系もあらかじめ確認しておいた方がよい。ほとんどの3D CADは海外メーカーのものであるため、「インチ/ポンド」に設定されている可能性がある。これを避けるために、新規ファイル作成の際に使用するテンプレートファイルを自社用として一つ用意し、その中で単位系を「ミリ/グラム」で設定しておくとよいだろう。

今回は、新しい連載シリーズの第1回として主に設定について解説した。次回以降は具体的なモデリングを進めていく中でのコツや注意点を解説していく。

執筆者紹介

草野多恵

大手メーカーの宇宙航空事業部門にて、設計から納品までのプロセス管理を担当。
製造業での実務経験を生かし、CADベンダーで約20年間一貫して製造業向けに3D CADの営業技術などを担当。
現在はフリーランスとして、効果的なCAD導入を支援する活動を行っている。

監修・執筆

山田学

ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。設計製図の企業内教育を種に活動。著書に『図面って、どない描くねん!』『めっちゃメカメカ! リンク機構99→∞』(共に日刊工業新聞社刊)など。

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