この連載について
シリーズ全5回のテーマを以下に設定した。BIMについて、アプリケーションの使い方やノウハウを中心に紹介したこれまでの記事から、少し違う方向にハンドルを切って「BIMでこう変えていこう」「BIMをこう変えていこう」と提案できるような記事にしていきたい。
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1.BIMにふさわしい図面を作ろう
今回のテーマは「図面を変える」だ。建物を建てるための情報を紙の図面で表現する手法は数百年の歴史があるのだが、建築自体の数千年の歴史から見れば図面はたかが数百年、10分の1程度だ。ましてCADやBIMなら、「建築数千年」のわずか直近50年程度の歴史なのだ。BIMの登場によって作図ルールは臨機応変に変えてもいい、変えなければいけないと筆者は思うのだが、どうだろう?
BIMの登場によって変えていく必要が出てきた図面ルールについて、幾つか例を挙げて提案しよう。
2.開口部の表現
筆者は2012年4月、本連載の下記記事で「壁のある部分は薄い色の塗りつぶしで表現する方法」を提案し、「塗りつぶし表現の軸組図を見た建築設計製図の師匠たちから『これは図面ではない』という声も聞こえてきそうだが、これも聞こえないふりをしよう」と書いた。8年も前のことだ。
つまり下図左側のように壁のない開口部に×印を線で書くのではなく、右側のように壁を塗りつぶしで表現すればどこが開口か一目で分かるという提案だ。BIMならRevitでもARCHICADでも壁を塗りつぶしで表現するのは簡単だ。BIMで塗りつぶし表現を使えば開口の位置や大きさが変更になっても×印を作図し直す必要がない。モデルの変更に図面は追随する。何より変更忘れという間違いを減らすことができる。
軸組図での、壁のない所とある所の表現
筆者の8年前の提案だが、残念ながらあまり浸透していない。特に公共工事では相変わらず×印で図示していることが多いようだ。現場の設計者に聞いてみると、その原因は「Jw_cad納品のときにうまく塗りつぶし図形に変換できない」、「JIS建築製図通則の順守を求められる」といったことのようだ。発注者がまだJw_cadでのデータ納品を求めているのは少々驚きではあるが。
3.躯体(くたい)と増し打ちの境界線は破線か?
鉄筋コンクリートの壁などで「コンクリートの増し打ち(打増し)」が行われる。仕上げの分の20mmほどを本来のコンクリート躯体より膨らませておいて、その部分に目地を設ける。
どこまでがコンクリート躯体で、どこが増し打ちかを示すために図のように境界線を破線で表現する。これは国土交通省の建築工事設計図書作成基準などで決められているルールだ。
『建築工事設計図書作成基準』での「コンクリートの打増し」表現
実はBIMアプリケーションのRevitではこの表現が面倒だ。デフォルトでは左のようにコンクリート躯体と増し打ち部の境界線が実線になるので、これを「線種変更」という操作で中央の破線になるように変更していく。100カ所あれば100回のクリックが必要だ。右のように増し打ち部を薄いグレーで表現するのであれば壁の設定だけで可能なので、クリックは不要だ。コンクリートの増し打ち表現ルールを変えれば、100回もクリックせずに済む。
Revitでの増し打ち表現
ちなみにARCHICADなら「複合構造」を使って、初めから境界線を破線で作図することができる。
4.仕上げは記号で標準化
「BIMのメリットである共通コードによる材料や施工方法の管理を進めたい。しかし日本で統一して使える建築情報分類体系コードができて、普及するまで待っているわけにはいかない。日本全国で統一された建築情報分類体系コードがまだ存在しないなら、会社ごとにあるいはプロジェクトごとに作ればよいだろう」と筆者は今年2月の本連載記事で書いた。
標準コードがあれば記号だけで仕上げの仕様を表現できる。文字で「コンクリート打放し(A種)+無機系塗料」などと書かずに「a」というコードで表現することで図面表現は変わる。2月の記事ではRevitでキーノートと凡例を使う例を紹介したが、ここではARCHICADの例を紹介する。ARCHICADの分類マネージャーとプロパティマネージャーを使って「仕上記号」や「仕上名称」を「壁」に割り当てることで、図のような記号による引出線や凡例の表を作成することができる。ここではCBI Classificationというニュージーランドで使われている建築情報分類体系コードを使ってみた。
分類マネージャーでCBI Classificationを登録
凡例を一覧表で作成
ラベルでコードもしくは仕上げ情報を表示