2021年 4月

実務者のためのCAD読本

BIMを学ぶ【BIMをこう使う/第1回】

監修:鈴木 裕二

BIMアプリケーションの使い方を学ぶ方法をご紹介する。コンピューターの中に建築モデルを作るBIMなら建築を効率よく勉強できる。一通り学んだけれど、使い方が身に付かない講習に参加するのはもうやめて、参加型の講習に参加しよう。Zoomを使った遠隔講習でも参加型の講習を実現できる。二人一組のペアオペレーションや、学んだらすぐ教える側にスイッチできることも役に立つ。さらに筆者おすすめのRevitとArchicadの解説書も紹介する。

この連載について

BIMの新しい使い方の提案と解説を目指して、今回のテーマを「BIMをこう使う」とした。BIMをこう使えば設計時間を短縮できるという実利を求める話ではなく、BIMをこう使えば面白い、という内容にしていきたい。

シリーズ記事

  • BIMを学ぶ【BIMをこう使う/第1回】
  • BIMを見せる【BIMをこう使う/第2回】
  • BIMをクラウドで使う【BIMをこう使う/第3回】
  • BIMアプリをカスタマイズする【BIMをこう使う/第4回】
  • BIMをプログラミングする【BIMをこう使う/第5回】
  • *大塚商会では本稿で紹介している全ての製品を取り扱いしているわけではありません。
    お客様のご希望製品の取り扱いがない場合もありますのであらかじめご了承ください。

1.BIMだからこそ

BIMは比較的新しい設計手法だ。だから設計のさまざまな場面で、これまでと違う使い方ができるはずだと筆者は確信している。BIMの新しい使い方の提案と解説を目指して、本シリーズのテーマを「BIMをこう使う」とした。予定しているのは次の五つのテーマだ。BIMをこう使えば設計時間を短縮できるという実利を求める話ではなく、BIMをこう使えば面白い、という話にしていきたい。

  • BIMを学ぶ【BIMをこう使う/第1回】
  • BIMを見せる【BIMをこう使う/第2回】
  • BIMをクラウドで使う【BIMをこう使う/第3回】
  • BIMアプリをカスタマイズする【BIMをこう使う/第4回】
  • BIMをプログラミングする【BIMをこう使う/第5回】

今回のテーマは「BIMを学ぶ」だ。ちなみに筆者は大学と専門学校でRevitや構造設計を教えているが、プロの教員ではない。教育についてはアマチュアの非常勤講師だ。そんな筆者が考える「BIMを学ぶ」方法論だ。

2.建築を学ぶ近道

「建築はとにかく図面と寸法が大事」が持論の大先生に、時々BIMは軽んじられる。「BIMのおかげでプレハブ建築だらけになって、建築がつまらなくなった」と言われたこともある。「アプリケーションの使い方より、まず建築を勉強しなさい」と言われることもある。

ある教室での風景だ。
大先生「窓の高さがおかしいですね、これではイスに座ったときに外が見えません」
学生「ではこの3D画像を見てください。この窓をつかんでぐぐぐーっと、これくらいかな? おぉエエ感じです」
大先生「なんでもかんでもぐぐぐーっと動かしてはいかん。建築には決まった寸法というものがあるんじゃ。この窓下の高さは床から900にせんといかん」
学生「900ですか? プロパティを確認すると902.3ですね。はい、ほとんど変わりませんけど、900と入力します」

3Dウィンドウを表示させて窓下の高さを変更(Archicad)

アプリケーションの使い方より建築の勉強が必要だということには筆者も同意する。でもその方法と教材は教科書と紙の図面だけではない。上の例では窓を動かしながら適切な窓の高さを勉強できた。コンピューターの中に建物モデルを作る、BIMならではの学習方法だ。面積と法規制などはBIMで数字を見る方法が分かりやすい。省エネ計算もコンピューターで結果を確認しながら設計を進められる。海外の有名建築もコンピューターの中で体験できる。超高層の足がすくむような鉄骨建方の現場もVRを使って体験できる。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造を比較したモデリングも短期間でできる。

BIMこそが建築を学ぶ近道ではないだろうか。そのためには教える側がコンピューターとBIMに習熟する必要があるのだ。

3.社内教育で学ぶ

BIMアプリケーションを教えた経験からすると、学生相手の学校の授業より社会人相手の企業内研修はやりやすい。参加者のモチベーションが違うからだ。職場で「覚えなければいけない」と自覚して参加しているので教えやすい。質問も出る。

ただしワナもある。それは操作の説明だけで終わってしまって、参加者のスキルアップにはつながらないという場合だ。「はい、では次は屋根を配置します。このアイコンをクリックして、このように線を引いて……」「では説明したように操作してみてください」というストーリーで、参加者は一通りの操作を終える。ところが、職場に戻ってRevitやArchicadを使って実際の建物をモデリングや図面化しようとすると、途端に手が止まってしまう。体験はしたが理解していない受講者の典型だ。

筆者はそうならないように次のような講習を提案し、おおむね実現できている。

  • 質問しやすい雰囲気づくり……スケジュールより質問と回答、参加者同士での議論を優先
  • 途中に小テストをして理解度を確認……実は基本の基本が分かっていなかったなどということがないように
  • 講習最終日は実物件で講習……仕事で関わっている物件になるとやる気と興味が湧いてくる
  • 講習後も質疑応答できるネット上の仕組みを提供……後から出てくる疑問をフォロー
  • 講師も参加して実物件の設計……テクニックを習得するだけでなく、組織の在り方や仕事のフローの改善につながる

少人数の企業内講習

4.遠隔講習で学ぶ

Zoomなどを使った遠隔での講習もよく行われる。ただし録画した動画を流すだけの講座は役に立たない。録画を流すことは何の問題もないが、きちんと質疑応答の時間を設定したり、講習中にチャット機能をオンにしておいて会話ができるようにしたりしてほしい。対話のないテレビ放送のような講習は受ける側のことを考えていないダメ講習だ。Zoomを使った講習のポイントを挙げてみよう。

  • チャット機能を使って参加者の声を吸い上げる
  • 投票(アンケート)や「手を挙げる」機能を使って授業に参加してもらう
  • 画面共有で参加者のアプリケーション操作を全員で見る時間をつくる
  • 質問に対しては参加者のアプリケーションをリモート操作して答える
  • 講師側のBIMアプリケーションの操作をリモートで受講者に行わせて理解度をチェックする

これらを実現するには難しい点もある。リモート操作をしてもらうには受講者がパソコンで参加していることが条件になる。スマートフォンでZoom画面を見ている場合は操作できない。

また、参加者の画面を操作し、参加者が講師の画面を操作できるZoomでの授業は対面授業で取り入れることもできるが、難しいこともある。筆者はある学校の対面授業で同時にZoomを使おうとしたが、学校の通信環境などのハードルが高く実現できなかった。

Zoomを使った講習配信(BIM LABOによる)

5.ペアオペレーション

昔から「習うより、慣れろ」とか「師匠の技術を盗め」などと言われてきた。今は効率のよい教育システムがどこにもあって、先輩の技術を盗むなんてことはないのかもしれない。それでも筆者が提案したいのは「ペアオペレーション」だ。プログラミングの世界では「ペアプログラミング」というソフトウェア開発手法がある。二人で一台のコンピューターに向かいコードを作成する。一人がキーボードでコードを入力し、もう一人はそれを見てアドバイスする。それを適当なタイミングで交代してコードを完成させるという手法だ。

これはBIMアプリケーションの学習でも効果がある。コロナ禍の現在は隣同士に座って画面をのぞいてというわけにはいかないが、Zoomミーティングを使えば離れたところからでも一つの画面を見て「ペアオペレーション」や「チームオペレーション」をできる。コツは操作する側がこれから何をするかを、「これからドアの位置を調整していきます」などと説明しながら操作することだ。見ている側は新しいアイデアを提案したり、ベテランの素早い操作を「盗む」ことができたりする。思わぬ相乗効果が期待できる方法だ。

Zoomを使ってペアでGrasshopperアプリを操作(BIM LABOにて)